棚に少し空きがあると、まだ何か入れられそうに見えます。箱の中も、すき間なく収まるとうまく収納できた気がします。
ところが、ぴったり詰めた直後はきれいでも、物を一つ出すと戻せなくなることがあります。新しく入ってきた物の置き場もなく、空いている椅子やテーブルが一時置き場になります。
収納では、入る量と使える量が同じとは限りません。
器は、空いているところを使っている

『老子』第11章には、車輪、器、部屋が出てきます。車輪は中心の空いているところがあり、器は中が空いているから物を入れられ、部屋は戸や窓として開けたところがあるから使える、という内容です。
形のある部分を作っても、実際の働きには「何もないところ」が関わっています。
空きを「まだ使っていない場所」ではなく、使うために必要な場所として見る視点は、片づけにもよく合います。
収納には、手を動かす場所が要る

引き出しへ服をぎっしり入れると、目当ての1枚を抜いたときに隣の服が倒れます。棚へ本を端まで詰めると、1冊を戻すためにほかの本を押さえながらすき間を作らなければなりません。
食器棚も、重ねられるだけ重ねると、下の皿を使うたびに上を持ち上げます。入ってはいても、動かすための空間が足りません。
余白は、飾りではなく作業する場所です。指を入れる、物を傾ける、いったん横へよける、新しく入った物を仮に置く。こうした動きができるぶんだけ、収納は使いやすくなります。
空白を増やせばよいわけではない

余白のある写真が美しく見えるからといって、棚を空けること自体を目標にすると、別の物差しが増えます。
見える場所に物があったほうが思い出しやすい人もいます。手の届く範囲へ日用品を集めたほうが動きやすい人もいます。広く空いた床より、必要な物が近くにあることを優先したい暮らしもあります。
必要なのは、写真としての空白ではありません。出す、使う、戻すという動作ができ、新しく入った物を見直すまで受け止められる余裕です。
一時置きにも、正式な場所を作る

暮らしていれば、すぐに定位置へ戻せない物が出ます。届いた荷物、読みかけの書類、あとで家族へ渡す物、洗濯する前の服。すべてをその場で片づけようとすると、忙しい日に止まります。
一時置きのトレーやかごを一つ用意しておくと、テーブル全体が仮置き場になるのを防げます。そこがいっぱいになったときが、見直す合図にもなります。
何も置かない場所だけが余白ではありません。次の動作へ移るまで、途中の物を受け止める場所も暮らしの余白です。
戻すときに詰まる場所を一つ空ける

見直しやすいのは、物を出すときより、戻すときに手が止まる収納です。
一つ取り出すと周りが崩れる。戻すために中身を押し込む。別の物をいったん全部出す。そんな場所を一つ選び、物一つ分だけ動かせる空間を作ります。
手放す物を急いで決めなくても、使用頻度の低い物を別の段へ移す、重ね方を変える、箱を一つ減らす方法があります。戻す動作が軽くなったか、数日使って確かめます。
空いている場所を見ると埋めたくなるとき、第11章の器を思い出す。その空きが、出し入れの動作を支えていることがあります。
参考資料
- Chinese Text Project: 『老子』第11章「無用」
- Chinese Text Project: 馬王堆帛書『老子』第11章相当箇所
- Stanford Encyclopedia of Philosophy: Laozi

ライフオーガナイザー®として、特にADHD傾向のある方や片づけが苦手な方をサポート。完璧主義や罪悪感、思い込みなど、片づけの障害となる心理的要因に寄り添い、無理なく続けられる仕組みづくりを提案しています。
2012年からこの分野を学び、2023年にアメリカの専門団体「Institute for Challenging Disorganization®」にて日本人初のCPO-CDを取得。
「片づけの負担を減らし、自分らしい人生を楽しめる人を増やしたい」との思いで活動中。




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