同じ種類の物がいくつもあると、「減らしたほうがいい」と言われることがあります。タオルは何枚、食器は何客、服は何着。目安があると決めやすくなる一方で、その数に自分の暮らしを合わせようとすると苦しくなります。
洗濯する頻度も、来客の数も、体調も違います。毎日使う物と、持っていることで安心できる物もあります。適正量は、外から渡された数字だけでは決まりません。
『老子』の「知足(ちそく〜足るを知る)」は、自分にとって足りる量を考えるときによく引用される言葉です。
「知足」は、少なく持つ競争ではない

『老子』第33章には「足るを知る者は富む」という一節があります。第44章や第46章にも、足ることを知り、どこで止まるかを知る表現が出てきます。
現代では、欲を減らして慎ましく暮らす教えとして紹介されることがあります。ただ、ここから「持ち物は少ないほどよい」という一つの数字を導くと、知足そのものが新しい競争になってしまいます。
10着で暮らす人を見て、自分は30着もあると落ち込む。収納に空きができても、まだ減らせる物を探す。足りる地点を知るはずが、終わりのない不足感へ戻っています。
知足を片づけに引き寄せるなら、減らす量を決めるより「自分は何があれば困らず、どこから管理が重くなるか」を知るほうが自然です。
暮らしに必要な量は、使い方で変わる

タオルを例にすると、毎日洗濯できる家と、週に2回まとめて洗う家では必要な枚数が違います。小さな子どもがいる時期、介護をしている時期、スポーツをする家族がいる時期にも増減します。
数が多いことだけを問題にすると、暮らしの事情が抜け落ちます。反対に、収納へ入るから持てるとも限りません。洗う、たたむ、選ぶ、戻す作業が負担になっていれば、収納量より先に管理できる量を考えます。
物の量は、収納の大きさ、使う頻度、手入れに使える時間のあいだで決まります。今の時期にちょうどよい量は、数年後には変わっていても不思議ではありません。
足りるには、安心も含まれる

防災用品や薬、消耗品の予備は、使っていないから減らせるとは限りません。買い物へ頻繁に行きにくい人にとって、少し多めの在庫は生活を安定させます。
服も同じです。着る物が選べないほど多いなら見直す余地がありますが、少ない服で洗濯に追われているなら、増やしたほうが楽になる場合があります。
適正量は、見た目の少なさでは測れません。使う人が安心して回せるところまで含めて考えます。
一つの種類だけ、足りる地点を探す

家中の物を数える必要はありません。最近、選びにくい、戻しにくい、足りなくなると感じた種類を一つ選びます。
たとえばタオルなら、次の洗濯まで何枚使うか、予備が何枚あると安心か、収納から出し入れしやすいかを見ます。食器なら、日常で使う数と、人が集まる日に必要な数を分けて考えます。
減らすか増やすかは、観察したあとで決めます。数を変えず、日常用と来客用の置き場所を分けるだけで使いやすくなることもあります。
「知足」を少ない暮らしの証明に使わず、自分の生活が無理なく回る地点を知る言葉として読む。そうすると、誰かの持ち物の数ではなく、今日の自分の暮らしを基準にできます。
参考資料
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ライフオーガナイザー®として、特にADHD傾向のある方や片づけが苦手な方をサポート。完璧主義や罪悪感、思い込みなど、片づけの障害となる心理的要因に寄り添い、無理なく続けられる仕組みづくりを提案しています。
2012年からこの分野を学び、2023年にアメリカの専門団体「Institute for Challenging Disorganization®」にて日本人初のCPO-CDを取得。
「片づけの負担を減らし、自分らしい人生を楽しめる人を増やしたい」との思いで活動中。




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