物の住所を決め、ラベルも付けた。それなのに半年ほどたつと、元の場所へ戻らなくなることがあります。
収納方法が間違っていた、と考えたくなりますが、決めたときには合っていたのかもしれません。子どもが成長し、働く時間やよく使う道具が変わった。体調によって動きやすさが変わった。収納は同じでも、暮らしのほうが先に動いています。
『老子』にたびたび登場する水は、変化に合わせることを考える手がかりになります。
水は、形を変えても水であり続ける

『老子』第8章には「上善は水の若し」というよく知られた言葉があります。水は多くのものを利しながら争わず、人が避けたがる低いところへ向かうと書かれています。
第78章では、世の中に水ほど柔らかく弱いものはないが、堅く強いものへ働きかける点で水に勝るものはない、という内容が続きます。
「流れに任せれば何でもうまくいく」という話に縮めると、原文の複雑さが抜けます。ここでは、水が一つの形へ固まらず、器や地形に応じて動くところへ目を向けます。
片づけに置き換えるなら、一度決めた収納を守り抜くことより、目的を失わずに形を変えられることです。
収納の目的は、決めた場所を守ることではない

玄関の高い棚に子どもの通園バッグを置く場所を作ったとします。大人が出し入れしていた時期には使えても、子どもが自分で準備するようになれば届きません。
そこで低いフックへ移すのは、最初の収納に失敗したからではありません。「翌日の準備ができる」という目的に合わせて、方法を変えたことになります。
キッチンでも、家族構成や食べ方が変わればよく使う器が変わります。仕事を始めれば、平日の調理で使う道具と休日に使う道具の優先順位が動きます。前に決めた場所を守るほど、今の動線から離れる場合があります。
凝り固まったルールは、誰か一人に負担を寄せる

「使ったら必ず元の箱へ戻す」という決まりは分かりやすい一方で、箱が遠い人や、ふたの開け閉めが負担な人には続きません。
家族の一人だけが戻し、ほかの人は注意される。そんな状態になったら、性格の差として片づける前に、ルールがきつすぎないかを見ます。
共有する物なら、全員が同じやり方を好む必要はありません。戻す場所だけ共有し、中の並べ方は細かく決めない方法もあります。個人の場所はそれぞれに任せ、食卓や玄関など共有部分だけ最低限の約束を作ることもできます。
収納ルールに試用期間をつける

置き場所を変えるとき、最初から正解に決めなくてもかまいません。
「2週間ここへ置いてみる」と期限を決め、仮のラベルを貼ります。戻しやすかったか、探し物が減ったか、別の場所が散らかるようになっていないかを確かめます。
合わなければ、また動かします。収納用品を買い足すのは、場所が落ち着いてからでも遅くありません。
見直す時期を、衣替えや学期の変わり目、働き方が変わったときに合わせておくのも一つです。毎日気にし続けず、決めた時期に確かめられます。
変えるのは、ルールか、場所か、動作か

最近戻らなくなった物を一つ選びます。以前は戻せていたなら、そのころと今で何が変わったかを書いてみます。
使う人、使う場所、使う回数、戻す時間帯。違いが見つかったら、収納を全部作り直さず、ラベルの分け方、置き場所、戻す動作のどれか一つを変えます。
暮らしが変わったのに、収納だけを固定する必要はありません。形を変えながら使い続けられることも、整った状態の一つです。
参考資料
- Chinese Text Project: 『老子』第8章
- Chinese Text Project: 『老子』第78章
- Stanford Encyclopedia of Philosophy: Laozi
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ライフオーガナイザー®として、特にADHD傾向のある方や片づけが苦手な方をサポート。完璧主義や罪悪感、思い込みなど、片づけの障害となる心理的要因に寄り添い、無理なく続けられる仕組みづくりを提案しています。
2012年からこの分野を学び、2023年にアメリカの専門団体「Institute for Challenging Disorganization®」にて日本人初のCPO-CDを取得。
「片づけの負担を減らし、自分らしい人生を楽しめる人を増やしたい」との思いで活動中。




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