実家の片づけで最初に止まるのは、物が多いからじゃない SO05

帰省のたびに、「実家、そろそろどうにかしないと」と思う。なのに、いざ帰ると、結局なにも手をつけられずに終わる。

そういう方、多いんじゃないでしょうか。

実家の片づけが難しいのは、物が多いからだけではありません。自分の家ではないのに、自分が動く側になる。ここに、自分の家を片づけるのとは違う難しさがあるんです。

最初にお断りしておくと、この記事で扱うのは「自分の物をどうするか」です。親世代の物との向き合い方は、もっと長い時間と、別の話が必要になるので、ここでは深く立ち入りません。まずは、実家にある「自分の物」を進める。そこに絞ってお話しします。

帰省で実家を片づけるとき、最初に止まる理由

実家の片づけで手が止まるのは、物が多いからというより、「誰の物か」が混ざっているからです。

実家には、いろんな所有者の物が、ごちゃっと一緒に置いてあります。自分が子どもの頃に使っていた物。親が買った物。家族みんなのアルバム。これが全部、同じ押し入れや同じ部屋に同居している。

ここで、親の物まで一緒に動かそうとすると、ぶつかりやすいんです。「勝手に捨てた」「あれ、どこやったの」。よかれと思って手を出したことが、すれ違いになる。これは誰にでも起きることなので、もし心当たりがあっても、自分を責めなくて大丈夫です。

だから、まず手をつけるのは「自分の物」から。これが、いちばん揉めない順番なんです。

大分類:誰の物かを、最初にはっきりさせる

実家を片づけはじめる前に、目の前の物を、所有者でざっくり3つに分けます。

自分の物

子ども時代の物、結婚前の物、いまも置いてもらっている物。これは、自分が責任を持って判断できる物です。今回、手をつけるのは、ここ。

親の物

親が使っている物、親が買った物。これは、親の判断を待ちます。勝手に動かさない。「もう使ってないでしょ」と思っても、そこには触れない。

共有していた物

家族のアルバム、家具、家電など、誰のものとも言いきれない物。これは、親と相談して決める物です。今すぐ結論を出さなくていい。

この3つに分けるだけで、「今日、自分が手をつけていい物」がはっきりします。実家全体ではなく、「自分の物」という小さな範囲に絞れる。それだけで、ぐっと動きやすくなります。

中分類:自分の物に、どの軸を当てるか

「自分の物」と分けられたら、その中をもう一段、細かく分けます。物によって、当てる軸が変わります。

子ども時代の物

アルバム、賞状、文集、昔の趣味の物。これは、「思い出度」で分けます。全部を残す必要も、全部を手放す必要もありません。「これは手元に置きたい」「これはもういいかな」を、自分の気持ちで分けていく。

もう使わない物

着られない服、使わない雑貨、読まない本。これは、「出口」で分けます。捨てるだけが手放し方ではありません。寄付する、売る、譲る、それでも決められなければ保留する。出口を増やすと、手放せなかった物が動きはじめます。寄付・売る・譲るの選び方は、別の記事でくわしく書いています。

まだ使う物

いまの暮らしでも使えそうな物。これは、保留にするか、持ち帰る。実家に置いておく理由がないなら、思いきって自分の家へ。

帰省という締切を、味方にする

実家の片づけがなかなか進まないのは、「いつでもできる」と思っているからかもしれません。逆に言うと、帰省には「滞在中だけ」という締切があります。

片づけは、締切があると前に進みます。引っ越しのときに一気に片づくのと、同じ理屈です。

帰省中にやることは、シンプルです。自分の物を「持ち帰る物・実家に残す物・手放す物」の3つに分けるだけ。全部を完璧に終わらせなくていいんです。

今回の帰省で分けきれなくても大丈夫です。次の帰省で、続きをやればいい。一度で終わらせようとすると、しんどくなって、結局また「いつか」に戻ってしまいます。少しずつでいいんです。

「もったいなくて」が出てきたら

実家の物は、思い出が乗っているぶん、「もったいない」が出やすいです。

子どもの頃に使っていた物、親が買ってくれた物。まだきれいだし、捨てるのは惜しい。でも、自分の家ではもう使わない。この「捨てるには惜しいけど、使わない」で、手が止まる。

そういうときは、捨てる以外の出口を思い出してみてください。寄付できそう? 欲しがってる人、いない? それでも手放せなければ、「今は、出さない」でいい。

手放す数を競う必要は、まったくありません。実家の物には、その人の歴史が乗っています。「もったいない」と感じる気持ちそのものは、大事にしていい。出口を増やしても残る物は、残していいんです。「もったいない」で止まってしまう理由は、別の記事でくわしく書いています。

親の物は、対話を重ねながらゆっくり

最後に、いちばん大事なことを。

自分の物が片づいてくると、つい親の物にも手を出したくなります。「これ、もう使ってないよね?」「片づけちゃっていい?」。

でも、ここは、ぐっとこらえてほしいんです。

親には親の、物との関わりがあります。あなたから見て「使っていない物」でも、親にとっては意味のある物かもしれない。勝手に判断しない。これだけは、守ってほしいんです。

そして、いちばんの対話のきっかけは、説得ではありません。あなたが自分の物を片づけている姿そのものです。「お母さんも、一緒にやってみる?」が自然に出てくるのは、自分が先に動いているとき。急がず、何度かの帰省をかけて、ゆっくり進めていきましょう。

この片づけ方を、もっと知りたい方へ

「捨てるを起点にしない」という考え方を一冊にしたのが、前作です。

『捨てるからはじめない 片づけのプロは何を「捨てた」のか』(既刊・Kindle)

そして、今回お話しした「大→中→小」や「誰の物かで分ける」「出口で分ける」を、辞典のように引ける形にまとめたのが、次の本です。

『分類の軸辞典 ──片づけを制するものは、分けるを制す』(近日発売予定)

実家の片づけのシナリオは、第11章にそのまま収録しています。帰省のあいだに開いていただけるよう、具体的な手順で書きました。発売前のお知らせや片づけのヒントは、メールレターでもお届けしています。

吉村 あきこ

ライフオーガナイザー®として、特にADHD傾向のある方や片づけが苦手な方をサポート。完璧主義や罪悪感、思い込みなど、片づけの障害となる心理的要因に寄り添い、無理なく続けられる仕組みづくりを提案しています。
2012年からこの分野を学び、2023年にアメリカの専門団体「Institute for Challenging Disorganization®」にて日本人初のCPO-CDを取得。
「片づけの負担を減らし、自分らしい人生を楽しめる人を増やしたい」との思いで活動中。

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