片づけで手が止まるのは、「いる/いらない」しか見ていないから SO02

「片づけよう」と思っても、何から手をつけていいか分からなくて、結局そのまま。クローゼットの前で、書類の山の前で、立ち尽くしたまま動けない。

そういう経験のある方に、お伝えしたいことがあります。

片づけられないんじゃありません。分け方が分からないだけ。そして、分け方が分からないんじゃなくて、物を分ける視点が、少ないだけかもしれないんです。

この記事では、「分類の軸」という考え方を渡します。物を分ける視点を、いくつか手元に持っておく。それだけで、止まっていた片づけが動きはじめます。

「いる/いらない」で止まるのは、あなたのせいじゃない

片づけというと、多くの人が「いる物と、いらない物に分けること」だと思っています。

だから、物を手に取って、自分に聞くんです。「これ、いる? いらない?」と。

ところが、答えが出ない物が、必ず出てきます。「いる」と言い切るほど使ってない。でも「いらない」と言い切るには、なにか引っかかる。だから「わからない」。だから「あとで考える」。そして、山がまた一つ増える。

これ、能力の問題ではありません。「いる/いらない」という、たった一つの問いだけで分けようとすると、その一つで答えが出ない物の前で、誰でも止まります。詰まっているのは、判断力じゃない。使える問いを、まだ手にしていないだけなんです。

「決められない自分はだめだ」「優柔不断だ」「片づけの才能がない」。そう思っている方が、本当に多い。でも、止まっていたのは、道具が少なかっただけ。それを、自分の能力の問題にすり替えてしまっているんです。

「分ける」と「捨てる」は、別の作業

もう一つ、ほどいておきたいことがあります。

片づけが苦しくなる大きな理由が、「分ける」と「捨てる」をくっつけて考えていることです。

「分ける」というのは、物に問いを当てて、仲間分けすること。「捨てる」というのは、その一つを手元から出す決断。この二つは、本来べつの作業です。

でも、くっついていると、物を分けようとするたびに「捨てるかどうか」の決断を迫られる。一つ仕分けるたびに、手放す覚悟を問われる。これでは、疲れて当たり前です。

まず、分けるだけ。手放すかどうかは、分け終わってから考える。この二つを切り離すと、片づけはぐっと楽になります。今日のこの記事は、「捨てる」の話ではなくて、その手前の「分ける」の話です。

分類の軸という考え方:物を分ける視点は、いくつもある

では、本題です。物を分ける視点は、「いる/いらない」のほかに、いくつもあります。

私はそれを「軸」と呼んでいます。軸というのは、物に当てる問いのことです。

たとえば、こんな軸があります。

  • 時間で分ける:「これ、いつ使う物?」
  • 気持ちで分ける:「これ、好き?」
  • 誰のもので分ける:「これ、誰の物?」
  • 状態で分ける:「これ、まだ使える?」
  • 出口で分ける:「これ、手放すなら、どの道で?」

「いる/いらない」で詰まった物に、別の軸を当ててみる。「いつ使う?」と聞くと、「あ、これは冬に着るやつだ」と答えが返ってくる。「好き?」と聞くと、「好きじゃないけど、仕事で要るな」と返ってくる。問いを持ち替えると、さっきまで「わからない」だった物が、ふっと答えをくれるんです。

これらの軸は、誰かが研究して、誰かが現場で試して、形になってきたものです。言ってみれば、借りられる他人の視点。自分の中に問いが一つしかないなら、外から借りてくればいい。私が現場で使っている分類の軸も、そうやって積み重なってきたものです。

「分け方が分からない」のは、視点が少ないだけかもしれません。

AIと一緒に分類の軸を試せる無料の場(claice)で、目の前の物から始めてみることもできます。

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大→中→小で分けてみる(順番のコツ)

軸が分かっても、いざクローゼット全部、書類全部を前にすると、また止まります。量が多すぎるからです。

ここでのコツは、いきなり細かく分けないこと。大きく分けて、中くらいに分けて、最後に細かく分ける。この順番です。

クローゼットを例にしてみます。

まず、大きく分ける。「衣類」と「衣類じゃないもの」。クローゼットの中から、バッグや書類や季節品を、先に抜き出します。次に、中くらいに分ける。残った衣類を「今のシーズン」と「オフシーズン」に。今着られる物だけ、手元に置きます。最後に、細かく分ける。今シーズンの服に「好き? 使ってる?」の軸を当てていく。

書類でも同じです。大きく「今いる/今いらない/分からない」に分けて、中くらいに「期限があるか」で分けて、細かく「次に何をする書類か」で分ける。

段階ごとに、当てる軸を切り替える。これがうまくいくと、量に飲み込まれずに、最後の細かい判断まで辿り着けます。

「これ、どっちに入れる?」で迷ったときの一手

軸を増やしても、「これ、どっちに入れるんだろう」と迷う物は、必ず出てきます。時間で分けるべきか、気持ちで分けるべきか。寄付か、保留か。

そういう物は、無理にどちらかに決めなくていいんです。

「いったん保留」という置き場所を、一つ持っておく。決められない物を、決められないまま、ちゃんと置いておける場所です。「あとで考える」で山の上に放り出すのとは違います。「今は決めない」と自分で選んで、保留の箱に入れる。それだけで、その物は片づいた扱いになります。

迷う物が出てきても、保留があれば、手は止まりません。軸が一つ増え、保留という逃げ場が一つあるだけで、迷いが動きに変わります。

あなたの片づけに、軸を増やすところから

最後に、いちばん大事なことを。

軸を、全部覚える必要はありません。

世の中には、たくさんの分け方があります。でも、「それを全部マスターしてから片づけよう」なんて思わなくていい。まずは一つ。「いる/いらない」のほかに、新しい視点を一つだけ足してみる。それだけで、止まっていた物が動きはじめます。

そして、どの軸が合うかは、人によって違います。時間の軸がしっくりくる人もいれば、気持ちの軸でするする進む人もいる。100人いたら、100通りの分け方があります。ここで挙げた軸が合わなければ、自分で軸を作ってしまってもいい。「夫が触る物と、私だけが触る物で分ける」でも、立派な軸です。

あなたの暮らしに、いちばん合う軸は、たぶんあなたの中にしか見つからないものです。借りた視点を、馴染ませて、自分用に変えていく。その手前の足がかりとして、いろんな軸を一覧で持っておきたい方には、本にまとめたものがあります。

軸を一覧で持っておきたい方へ

「捨てるを起点にしない」という考え方を一冊にしたのが、前作です。

『捨てるからはじめない 片づけのプロは何を「捨てた」のか』(既刊・Kindle)

そして、今回お話しした「分類の軸」を、辞典のように引ける形でまとめたのが、次の本です。

『分類の軸辞典 ──片づけを制するものは、分けるを制す』(2026年8月発売予定)

時間・気持ち・誰のもの・状態・出口など、物を分ける軸を一覧にして、「つぶやき」や「困りごと」から引けるようにしました。気になった軸を一本だけ開く、という使い方ができます。発売前のお知らせや片づけのヒントは、メールレターでもお届けしています。

もっと深く知りたい方へ(関連記事)

  • 「もったいなくて手放せない」が止まる理由 → 出口で分ける
  • 捨てる以外の手放し方を知りたい人へ → 5つの出口(公開予定)
  • 寄付・売る・譲るの選び方 → 出口の先のこだわり(公開予定)
  • 実家の片づけを大→中→小で → 帰省の進め方(公開予定)
  • 衣替え・子ども部屋を進めるなら → 夏の片づけ(公開予定)
吉村 あきこ

ライフオーガナイザー®として、特にADHD傾向のある方や片づけが苦手な方をサポート。完璧主義や罪悪感、思い込みなど、片づけの障害となる心理的要因に寄り添い、無理なく続けられる仕組みづくりを提案しています。
2012年からこの分野を学び、2023年にアメリカの専門団体「Institute for Challenging Disorganization®」にて日本人初のCPO-CDを取得。
「片づけの負担を減らし、自分らしい人生を楽しめる人を増やしたい」との思いで活動中。

書籍『捨てるからはじめない 片づけのプロは何を「捨てた」のか』表紙

📖 著者・吉村あきこ の本

捨てるからはじめない
片づけのプロは何を「捨てた」のか

収納術もビフォーアフターも載っていない、「片づけの考え方」の本。Kindleで発売中。

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