食卓に郵便物が置かれていると落ち着かない人がいます。家族に片づけてほしいと伝えても、「別に困っていない」「あとで見るから」と返ってくる。
同じ場所を見ているのに、一人には散らかって見え、もう一人には必要な物が見える場所に置かれているだけです。どちらかが正しく、どちらかが間違っていると決めると、収納の話が人の評価に変わります。
『荘子』には、自分の立場から見えることを、そのまま世界全体の基準にしないための話が多く出てきます。
「こちら」と「あちら」は、立つ場所で変わる

『荘子』の内篇「斉物論」では、「彼」と「是」、「あちら」と「こちら」が互いに関わりながら生まれることが論じられます。
「人によって違うから、何をしてもよい」と短くまとめられる内容ではありません。むしろ、自分が当然だと思っている分け方や判断も、ある立場から見たものだと気づくための文章です。
片づけでは、見た目がそろっていることを優先する人もいれば、必要な物をすぐ取れることを優先する人もいます。どちらも暮らしをよくしたいと思っていて、見ている困りごとが違います。
「だらしない」と言った時点で、話し合いが止まる

床にバッグを置く家族へ「だらしない」と言うと、性格の問題になります。言われた側は、バッグの置き場所を考える前に自分を守りたくなります。
起きていることを、そのまま言葉にすると話しやすくなります。
「バッグが通路にあると、夜につまずきそうで心配」「食卓に書類があると、食事の前に移す必要がある」。困っている場面が具体的なら、相手も何を一緒に考えればよいか分かります。
相手の側にも理由があります。「部屋へ持っていくと提出を忘れる」「帰宅後はすぐ座りたい」「しまう場所がいっぱいで入らない」。理由を聞く前に正解を決めると、使えない収納が残ります。
個人の場所と、共有する場所を分ける

家族全員の持ち物を、同じ基準で整える必要はありません。
個室や個人の引き出しは、本人が探せて管理できているなら、見た目が違っても任せられます。一方で、廊下、食卓、玄関のように複数の人が使う場所では、最低限の約束が要ります。
共有部分では、「何も置かない」と広く決めるより、困ることを避けるルールにします。通路の幅を残す、食事の前に書類をトレーへ移す、鍵は外出する人が分かる場所へ置く。目的が見えるルールなら、見直すときにも話し合えます。
一人ずつ、違う質問をする

家族で同じ場所に困っているときは、「どう片づける?」から始めず、一人ずつ次のことを聞きます。
- その場所で困っていることは何か
- そこに置く理由は何か
- 変えるなら、どの動作までなら続けられそうか
全員の希望を完全に満たす場所が見つからないこともあります。その場合は、2週間だけ試す仮の場所を作り、困りごとが減ったかを見ます。
視点が違うと分かっても、すぐに一致するわけではありません。ただ、相手を直す話から、場所と動作を調整する話へ戻せます。
自分の正解を手放すことより、自分の見方がどこから来ているかを知り、相手の見方にも事情があると確かめる。そのほうが、家族で使う仕組みを作りやすくなります。
参考資料
- Chinese Text Project: 『荘子』内篇「斉物論」
- Stanford Encyclopedia of Philosophy: Zhuangzi「Perspectives on Perspectives」
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ライフオーガナイザー®として、特にADHD傾向のある方や片づけが苦手な方をサポート。完璧主義や罪悪感、思い込みなど、片づけの障害となる心理的要因に寄り添い、無理なく続けられる仕組みづくりを提案しています。
2012年からこの分野を学び、2023年にアメリカの専門団体「Institute for Challenging Disorganization®」にて日本人初のCPO-CDを取得。
「片づけの負担を減らし、自分らしい人生を楽しめる人を増やしたい」との思いで活動中。




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