片づけの本を読み、SNSで収納例を保存して、便利そうな道具も試した。それでも暮らしが落ち着かないと、「まだ正しい方法に出会っていないのかも」と次を探したくなります。
けれど、方法を増やすほど選ぶことも増えます。服は立てるのか重ねるのか。収納は見せるのか隠すのか。毎日リセットするのか週末にまとめるのか。どれも間違いではないからこそ、自分に合うものを決めにくくなります。
そんなときに『老子』や『荘子』を読むと、ライフオーガナイズと重なるところがあると感じます。
老子と荘子は、片づけの本ではありません

私が老子や荘子の考えに触れたのはYouTubeの歴史を面白く学ぶコテンラジオでした。老子・荘子のシリーズで解説を聞けば聞くほど「ここがライフオーガナイズに通じる!」と思うようになりました。
ライフオーガナイズが老子や荘子から生まれた、という話ではありません。古代中国の思想と、現代の暮らしを整える方法では、扱う時代も目的も違います。
共通点は、外から渡された一つの基準へ、人を無理に合わせようとしないところです。
『老子』には、力を入れて支配し続けるより、物事が自ずと動ける状態を重んじる考え方があります。『荘子』には、自分が見ている「こちら側」だけを絶対にせず、別の立場から見える景色へ目を向ける話が繰り返し出てきます。
どちらも長い時間をかけて読まれ、解釈も一つではありません。この「老子・荘子とオーガナイズシリーズ」では思想全体を短く要約するのではなく、暮らしの中で引っかかった場面に限って考えていきます。
誰かに合った方法が、自分にも合うとは限らない

たとえば、ふた付きの白い収納ボックスが整然と並んだ写真を見て、同じようにそろえたとします。見た目は落ち着いても、中身が見えないと存在を忘れやすい人にとっては、探し物が増えるかもしれません。
反対に、見える収納なら忘れにくいと聞いて全部を出したところ、目に入る情報が多くて休まらない人もいます。
方法だけを比べても決まりません。見る必要があるのか、見えないほうが落ち着くのか。使う頻度はどのくらいか。戻すときに何回動作が必要か。暮らす人と場所が変われば、答えも動きます。
ライフオーガナイズでは、先にその人の価値観や行動のクセを確認します。収納用品を選ぶのは、そのあと。この順番は、老子や荘子の考えと現代の暮らしを照らし合わせたときの感覚とよく似ています。
正解をなくすことと、何も決めないことは違う

「正解は一つではない」と聞くと、好きに置けばいい、家族が困っても気にしなくていい、という話に見えることがあります。共有する場所では、約束が必要です。
ただし、その約束は誰かの正解をそのまま持ち込むのではなく、家で実際に起きていることから決められます。
郵便物が食卓にたまりやすいなら、各自の部屋へ持っていく習慣を家族全員へ求めるより、食卓の近くに受け皿を置く。鍵を定位置へ戻せないなら、本人を注意する前に、帰宅してからそこへ向かう動線を見直す。決まりを守れない人を直すのではなく、決まりのほうを暮らしに近づけます。
合わない場所を一つだけ観察する

家全体を見直す必要はありません。戻せない物、探す物、家族と置き場所がぶつかる物を一つ選びます。
その場所で、次のことを確かめてみてください。
- その物は、どこで使っているか
- 戻すまでに、扉やふたをいくつ開けるか
- 見えていたほうがよいか、隠れていたほうがよいか
- その置き場所を決めたときと、今の暮らしは同じか
答えが出なくても、合わない理由が一つ見つかれば、次に試すことを選びやすくなります。
このシリーズでは、『老子』の無為、知足、器の空、水の柔らかさと、『荘子』の視点、無用の用、逍遥遊を一つずつ取り上げます。古典を正解として持ち込むのではなく、正解を探し続けて疲れたときの、別の見方として読んでいきます。
参考資料
- Stanford Encyclopedia of Philosophy: Laozi
- Stanford Encyclopedia of Philosophy: Zhuangzi
- Chinese Text Project: Dao De Jing
- Chinese Text Project: Zhuangzi

ライフオーガナイザー®として、特にADHD傾向のある方や片づけが苦手な方をサポート。完璧主義や罪悪感、思い込みなど、片づけの障害となる心理的要因に寄り添い、無理なく続けられる仕組みづくりを提案しています。
2012年からこの分野を学び、2023年にアメリカの専門団体「Institute for Challenging Disorganization®」にて日本人初のCPO-CDを取得。
「片づけの負担を減らし、自分らしい人生を楽しめる人を増やしたい」との思いで活動中。




コメントを残す