時間をかけて片づけたのに、数日後には物が出たままになっている。きれいになった直後を知っているぶん、元に戻ったときのがっかりも大きくなります。
次は毎日戻そう、今度こそ散らかさないようにしよう。そう決めて続くこともありますが、忙しい日や疲れた日が重なると止まります。維持するために、毎回かなりの気力を使う仕組みだったのかもしれません。
『老子』の「無為(むい)」という言葉は、こんな場面を考える手がかりになります。
無為は、何もしないことではない

無為は、字だけを見ると「何もしない」と読めます。けれど、『老子』の文脈で単なる不作為を勧めているわけではありません。自分の思いどおりに動かそうとして余計な力を加え続けることから離れ、物事が動ける状態を損なわない、という読み方があります。
『老子』第37章には「道は常に無為にして、而も為さざる無し」と読まれてきた一節があります。何もしないから何も起きないのではなく、押さえつけて操作し続けなくても働く状態を表しています。
これを片づけへそのまま当てはめることはできません。ただ、毎回がんばらないと保てない収納を見直す考え方として読むと、よく分かります。
戻せない人より、戻しにくい仕組みを見る

キッチンで毎日使うはさみが、廊下の収納庫に入っていたらどうなるでしょう。使うたびに廊下まで取りに行き、終わったら戻す必要があります。余裕のある日はできても、料理や片づけが重なった日は調理台に残りやすくなります。
はさみを使う場所の近くへ移せば、必要な動作が減ります。人の根気を強くしたわけではありません。戻すために使っていた力を減らしただけです。
よく使う物にふたをしない、引き出しを細かく分けすぎない、家に入った郵便物を最初に置く場所を決める。どれも小さな変更ですが、「ちゃんと戻そう」と毎回考える回数を減らせます。
きれいな収納ほど続くとは限らない

見た目が整った収納には、箱を引き出す、ふたを開ける、種類を判断する、きれいに収める、ふたを閉じる、箱を戻すという手順が隠れていることがあります。
その手順が苦にならない人もいます。一方で、使う回数が多い物や疲れた時間帯に戻す物では、数秒の手間が積み重なります。たためなかった部屋着を一時的に入れるかごや、帰宅後のバッグを置く棚のように、置くだけで済む場所があったほうが暮らしは回ります。
収納を簡単にすると、少し雑に見えるかもしれません。何を優先するかは人によって違います。扉を閉めた景色を優先したい場所もあれば、戻せることを優先したい場所もあります。
習慣も、意志だけに任せない

夜に部屋を戻す習慣を作りたいなら、「気づいたら片づける」より、すでにある行動へつなげます。
夕食の食器を下げたあとに、食卓の上だけ戻す。歯を磨きながら、床の物をかごへ入れる。時間を決めるなら、5分で終わらなくてもアラームが鳴ったところでやめます。
毎日完璧に戻すことが目的ではありません。止まったあとに、また始める場所が分かる状態を作ります。
戻すまでの動作を一つ減らす

出したままになりやすい物を一つ選び、使い終わってから戻すまでを実際に動いてみます。
遠くまで歩く。別の部屋へ行く。扉やふたを開ける。細かい分類を考える。両手を使わないと戻せない。その中から、なくしても困らない動作を一つ減らします。
片づけを続けるために、さらに努力を足す前に、今使っている力を減らせる場所があります。無為を暮らしへ引き寄せて読むなら、そんな見直しから始められます。
参考資料
- Stanford Encyclopedia of Philosophy: Laozi「Naturalness and Nonaction」
- Chinese Text Project: Dao De Jing
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ライフオーガナイザー®として、特にADHD傾向のある方や片づけが苦手な方をサポート。完璧主義や罪悪感、思い込みなど、片づけの障害となる心理的要因に寄り添い、無理なく続けられる仕組みづくりを提案しています。
2012年からこの分野を学び、2023年にアメリカの専門団体「Institute for Challenging Disorganization®」にて日本人初のCPO-CDを取得。
「片づけの負担を減らし、自分らしい人生を楽しめる人を増やしたい」との思いで活動中。




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