ADHDの部屋づくり。片づけの前に、置き場所とレイアウトを変える HT01

ADHDの部屋づくり。片づけの前に、置き場所とレイアウトを変える

帰ってきて鞄を床に置いて、上着は椅子の背にかけて、郵便物はキッチンのカウンターに重ねる。鍵はポケットに入ったままで、翌朝また玄関で探す。ドアを閉めてからここまで、1分もかかりません。

ADHDの特性がある方のお宅に伺うと、玄関を開けるなり「ほんとうにだらしなくて」とおっしゃることがあります。でも床や机に物が残るのは、その人の性格というより物の置き場所が毎日の動きと合っていないことのほうが多いです。片づけの手順を覚えるより先に、置き場所の位置を変えたほうが早く変わります。

片づけが続かない部屋は、置き場所が行動とずれている

ADHDの部屋づくりやレイアウトを相談されたとき、私が最初に見るのは収納用品ではなく物の位置です。

リビングのテーブルにいつも同じ物が乗っている家は多いです。爪切りやハンドクリーム、体温計、ペン。どれも洗面所や引き出しに定位置があるのに、使うのはリビングです。使うたびに取りに行って、戻すときだけ10歩歩く。この10歩が毎回は続きません。

物が戻らないときは、戻す場所が遠いか開けるものが多いかのどちらかです。

以前伺ったお宅では、ゴミ箱がキッチンに一つだけありました。リビングのテーブルにはレシートや使い終わったティッシュ、宅配の伝票が溜まっていて、ご本人は「捨てられない性格なんです」とおっしゃっていました。テーブルの脇にゴミ箱を一つ置いたら、その週から机の上が変わりました。捨てられないのではなく、捨てる場所が5メートル先にあっただけでした。

部屋の様子を見て自分の人柄まで否定してしまうときは、置き場所の話とは別に考えたほうが楽になります。そのことは散らかった部屋は心を映す鏡じゃないに書きました。

帰ってきて、最初に手を離すもの

家の中でいちばん物が溜まるのは、帰ってきて最初に立ち止まる場所です。玄関のたたきや廊下の入口、リビングのドアの内側がそれにあたります。ここに置き場所がないと、置けるのは床だけになります。

鞄と上着

鞄は玄関を入って3歩以内に置ける場所を作ります。床に置いているなら、その場所に浅いかごか低い台を置くだけで足ります。中身を出す必要はありません。鞄の定位置を寝室のクローゼットに決めて続かなかった方を何度も見ています。毎日実際に手を離している場所のほうが続きます。

上着はハンガーにかけるまでの動作が多いです。クローゼットの扉を開けてハンガーを取って、かけて、扉を閉める。疲れて帰ってきた日にこの4つを毎回やるのは無理があります。壁にフックを1本つけて、そこにかけるだけにします。見えるところに上着がかかるのは気になりますが、椅子の背に積み重なるよりは扱いやすいです。

鍵と郵便物

鍵は玄関で目に入る高さに受け皿を置きます。小皿でも空き缶でもかまいません。ポケットから出した手が腰から目線のあいだで届くと入れやすいです。

郵便物は玄関で終わらせると、家の中まで入ってきません。玄関にはさみと紙を入れる箱を置いて、帰ったその場で封を開けます。要らない紙はそこへ入れて、残す紙だけ持って中に入る。玄関に紙の箱を置くのは抵抗があるかもしれませんが、テーブルに積まれた封筒の山を崩すよりは短い時間で済みます。

帰ってきてから手が止まって、決めた場所まで行けない日もあります。動きだせないときに何が起きているかは、片づけを始められないときに起きていることに書きました。

今夜帰ってきたら、鞄をどこで手から離したか覚えておいてください。明日も同じ場所なら、そこが鞄の置き場所です。

通り道に置ける場所を作る

家の中には毎日必ず通る道があります。玄関からリビングへ入る道と洗面所へ向かう道は、たいていの家で毎日使われます。物の置き場所をその道の上に作ると、戻すために遠回りしなくて済みます。

扉と引き出しを1枚減らす

しまうまでの動作を数えると、思ったより多いです。クローゼットの扉を開け、引き出しを引き、ケースの蓋を開けて物を入れ、また順番に閉めていく。ここまでで7回の動作になります。蓋を外して引き出しを浅いかごに替えると、3回で済みます。

現場でよくやるのは扉を外すことです。押し入れのふすまを1枚外し、蓋付きのボックスは蓋だけ外して別の場所にしまいます。見た目はすっきりしませんが、物が元の場所に戻る回数は増えます。

一時置きを認める

一時置きを禁止にすると、床が一時置きになります。かごを一つ、通り道の途中に置いてください。名前は「あとで決めるもの」でも「今週のもの」でもかまいません。とりあえずここに入れるという場所が1か所あるだけで、床に置かれる量が減ります。

かごはいっぱいになる前に空にする日を決めます。何曜日の夜と手帳に書いても続かない人が多いので、洗濯機を回しているあいだや録画を見ているあいだのように、すでに毎週やっている行動にくっつけます。

しまいに行く途中で別のことを始めて、手に持っていた物を関係のない場所に置いてしまうこともあります。その途切れ方は片づけの途中で気が散るときに書きました。

座る場所と寝る場所のまわり

一日のうちいちばん長くいる場所の半径1メートルに何があるかで、床に置かれる物の量が決まります。

手の届く範囲に置くもの

いつも座っている椅子やソファに座って、腕を伸ばしてみてください。そこに届く範囲にある物が、あなたが実際に使っている物です。届かないところにしまってある物は、使うときに持ってきてそのまま机か床に残ります。

座ったまま届く位置に、浅いかごかサイドテーブルを一つ置きます。入れるのは、この1週間で実際に手に取った物だけです。リモコンやハンドクリーム、爪切り、メガネ拭き。使っていない物を先に並べると、使う物の置き場所がなくなります。

いま床に置かれている物を一つ拾って、それが座った位置から届かない場所にしまわれていた物かどうか確かめてみてください。

充電の場所

充電ケーブルは部屋ごとに置きます。1本を持ち歩くと必ず行方がわからなくなるので、リビングと寝室に1本ずつ挿しっぱなしにするほうが手間が少ないです。

枕元も同じで、夜に手に取る物だけを置きます。メガネや水、読みかけの本くらいに絞ります。それ以外を枕元から出すと、朝に探す物が減ります。

見えないと忘れる、を前提にする

扉を閉めた瞬間に中身を思い出せなくなる、という話は発達特性のある方からよく聞きます。忘れっぽさというより、目に入らない物には思い出すきっかけがないだけです。買ったことを忘れて同じ物をまた買ってしまうのも、ここから起きます。

透明・オープン・高さ

収納用品は、中身が見えるかどうかを先に見ます。透明のケースや蓋のないかご、扉のない棚が候補になります。見えているとごちゃついて感じますが、忘れて二重に買うよりは扱いやすいです。

高さでも変わります。目線から腰までのあいだが、いちばん目に入って手も届く範囲です。よく使う物をここに集めて、季節の物を上と下に回します。押し入れの上段の奥に入れた物は、しばらく思い出しません。

ラベルは物の名前で書かない

ラベルに「文具」「雑貨」と書くと、目の前の物がそこに入るかどうかで迷います。ペンは文具ですが、宅配の伝票に書くペンは玄関に置きたい。書くのはその物を使う場面のほうです。

  • 「宅配で使う」
  • 「朝、出かける前に持つもの」
  • 「爪を切る」

この書き方なら、物を手に持ったときにどの場面で使うかを考えるだけで戻せます。分類の名前を思い出す手間がなくなります。

見える置き方を道具で補う方法は、発達特性に合うタスク管理グッズにまとめてあります。

置き場所を変えても、2週間ほどで元に戻ることがあります。戻ったときは自分を責めずに、位置が合っていなかったと考えて動かし直します。戻る仕組みそのものは片づけが続かない・元に戻るときに書きました。

模様替えの前に、1か所だけ動かしてみる

部屋全体のレイアウトを一日で変えようとすると、たいてい途中で力尽きます。家具を動かすと中の物が全部床に出て、それを戻す体力が残らないまま夜になり、前より散らかった部屋が次の休みまで続きます。オーガナイズサポートで伺うと、この途中で止まった部屋によく出会います。

動かすのは1か所にします。帰ってきて最初に手を離す場所か、床にいちばん物が溜まる場所。どちらかを選んで、そこに入れ物を一つ置きます。1週間そのまま暮らしてみて、物がそこに集まるなら位置は合っています。集まらなければ、もう少し手前に動かしてみてください。

人に見てもらえば早いとわかっていても、この部屋を見せるのが恥ずかしくて頼めない、という声をよく聞きます。同じことを部屋を見せるのが恥ずかしいときにも書きましたが、私が伺うお宅は最初からきれいではありません。片づいている家に呼ばれることのほうが少ないです。

それでも家に人を入れるのは無理だと思うなら、はじめの一歩プランという1回だけの相談があります。11,000円で、家を見せる必要も写真を送る必要もありません。帰ってきてどこで鞄を手から離すか、どこで手が止まるか。それを話してもらえれば、置き場所の見当はつきます。家具を買い替える前に、いま家にある物の位置から話してみてください。

吉村 あきこ

ライフオーガナイザー®として、特にADHD傾向のある方や片づけが苦手な方をサポート。完璧主義や罪悪感、思い込みなど、片づけの障害となる心理的要因に寄り添い、無理なく続けられる仕組みづくりを提案しています。
2012年からこの分野を学び、2023年にアメリカの専門団体「Institute for Challenging Disorganization®」にて日本人初のCPO-CDを取得。
「片づけの負担を減らし、自分らしい人生を楽しめる人を増やしたい」との思いで活動中。

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