節約より先に、暮らしを整える|物価高の今こそライフオーガナイズ

スーパーのレシートを見て、ふと手が止まる。光熱費の通知に、小さくため息が出る。ナフサ不足のニュースが連日続き、物価が上がりつづける毎日のなかで、「もっと節約しなきゃ」と気持ちが引き締まる。そんな感覚を、最近よく耳にします。

節約は、もちろん大切です。でも今日は、その前に少しだけ立ち止まって、一緒に考えてみたいことがあります。

「削る」より先に、できることがあるかもしれない。

物価高で家計のやりくりが大変な今だからこそ、私はライフオーガナイズという考え方をおすすめしたいと思っています。

「もっと削らなきゃ」と力が入る前に

家計が苦しくなると、私たちはまず「何を減らせるか」を探しはじめます。あれをやめよう、これを我慢しよう。安いものに切り替えよう。

その努力そのものを否定したいわけではありません。ただ、削ることだけに意識が向くと、暮らしがどんどん「我慢の集まり」になっていくことがあります。本当は大事にしたかったものまで、勢いで手放してしまう。気づけば、何のために頑張っているのか、自分でもよくわからなくなってくる。

だから、削る前に一度だけ、こう問いかけてみてほしいのです。

「私は、何にお金を使いたいんだろう。そして、何になら使いたくないんだろう。」

この問いに自分なりの答えを持っているかどうかで、節約の手ごたえはずいぶん変わってきます。100人いれば、答えは100通り。正解はありません。だからこそ、まず自分の答えを探すところから始めたいのです。

「片づけ」と「ライフオーガナイズ」は、少し違う

ここで、ことばの整理を少しだけ。よく似ているようで、私が大切にしている「ライフオーガナイズ」は、いわゆる「片づけ」とは出発点が違います。

片づけは、目の前の「もの」から

片づけは、ものを減らしたり、しまう場所を決めたりする作業です。目に見える結果が出やすくて、達成感もあります。物価高のなかで「収納を見直して、ムダな買い置きを減らそう」と動くのも、立派な片づけです。

ライフオーガナイズは、目に見えない「価値観」から

いっぽうライフオーガナイズは、もっと手前から始まります。「自分や家族にとって、何が必要で、何はそうでもないのか」という価値観を、まず言葉にしていく。そのうえで、暮らしの仕組みやお金の使い方を、自分に合うかたちに整えていく。

言いかえると、片づけが「もの」を整える作業だとしたら、ライフオーガナイズは「何を大事にするか」から整えていく考え方です。順番でいえば、ライフオーガナイズが土台で、その上に片づけが乗っている。そんなイメージを持っていただけると、近いかもしれません。

家を建てるとき、いきなり壁を塗ったりはしませんよね。まず地面を整えて、土台をつくる。暮らしも同じで、価値観という土台が整っていると、その上の片づけや家計の判断が、ぐっとぶれにくくなります。これは、いわば片づけの「準備運動」のような段階です。地味だけれど、ここがいちばん効いてきます。

価値観が定まると、お金の使い方が少しずつ変わる

「何を大事にしたいか」が自分の中ではっきりしてくると、日々の小さな判断が変わってきます。

たとえば、買い物。「安いから」「みんな持っているから」ではなく、「これは私の暮らしに本当に必要かな」と一度立ち止まれるようになります。すると、なんとなく買っていたものが減ったり、「あれ、これ家にもうあったかも」という重複買いに気づきやすくなったりします。

持ち物も同じです。自分にとって大事なものがはっきりすると、「とりあえず取っておく」が減ります。ものが減れば、それを置いておくための収納も、探す時間も、管理する手間も軽くなる。目に見えにくいけれど、こうした「持ちつづけるためのコスト」は、じわじわと家計や心の余白を圧迫しているものです。

もちろん、「片づけたら必ずお金が貯まる」と言いきるつもりはありません。暮らしも家計も、そんなに単純ではないからです。ただ、自分にとって大事なことに、お金と時間と空間を使えるようになる。その結果として、家計も少しずつ整いやすくなっていく。そういう順番なのだと、私は現場で感じています。

節約は「我慢して減らす」こと。ライフオーガナイズは「大事なものに、ちゃんと使えるようにする」こと。同じ家計の話でも、向いている方向が少し違うのです。

今日からできる、小さな一歩

大きく構える必要はありません。今日、ノートの片すみにでもできることを、ふたつだけ。

1. 「使ってよかったお金」を3つ書き出してみる

この1か月で使ったお金のなかで、「これは使ってよかったな」と思えるものを3つだけ思い出してみてください。金額の大小は関係ありません。家族で食べた温かいごはんかもしれないし、自分を休ませるための小さな何かかもしれない。

そこに、あなたが本当に大事にしたいものが、そっと顔を出しています。それが、あなたの暮らしの土台です。

2. 「なんとなく」のお金にだけ、印をつけてみる

反対に、「なんとなく買った」「気づいたら払っていた」というお金にも、責めずに目を向けてみます。やめる必要はまだありません。気づくだけでいいのです。気づけたものは、これからのあなたが、自分の意思で選びなおせるものになります。

このふたつは、節約術ではありません。自分の価値観を、自分の言葉にしていくための準備運動です。ここが整ってくると、「何を削るか」ではなく「何に使うか」を、自分で選べるようになっていきます。

削るのではなく、選びなおす

物価高の今、私たちはつい「減らすこと」ばかりに目を向けがちです。でも、本当に暮らしを楽にしてくれるのは、減らした量よりも、「自分にとって何が大事か」がはっきりしていることなのかもしれません。

大事なものがわかっていれば、削るときも迷いません。残すものに、胸を張れます。それは、物価がどう動いても揺らがない、あなた自身の選ぶ力になります。

片づけの前に、暮らしを整える。捨てることから始めるのではなく、何を大事にするかから始める。それが、私の考えるライフオーガナイズです。あなたにとっての答えは、きっとまた違うはず。だからこそ、まずは小さな問いから、始めてみませんか。

整える暮らしの伴走、ご相談ください

「何を大事にしたいか」を言葉にするのは、ひとりだと意外と難しいものです。あなたの価値観を一緒に整理しながら、お金・時間・空間の使い方を、あなたに合うかたちへ。ライフオーガナイザー歴14年の視点で、暮らしの整えに伴走します。まずはお気軽にご相談ください。

※「自分に合った片づけ方ってどういうこと?」という方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。

吉村

ライフオーガナイザー®として、特にADHD傾向のある方や片づけが苦手な方をサポート。完璧主義や罪悪感、思い込みなど、片づけの障害となる心理的要因に寄り添い、無理なく続けられる仕組みづくりを提案しています。
2012年からこの分野を学び、2023年にアメリカの専門団体「Institute for Challenging Disorganization®」にて日本人初のCPO-CDを取得。
「片づけの負担を減らし、自分らしい人生を楽しめる人を増やしたい」との思いで活動中。