ぬいぐるみの数を数えたことがある方は、あまり多くないと思います。棚の上にいくつか、ベッドのまわりに何体か、押し入れの袋にもいくつか。家のあちこちに分かれているので、全部を一度に見る機会がないんですよね。
オーガナイズサポートで伺ったお宅で、家じゅうから集めて床に並べてもらったことがあります。並べる前は10体くらいだとおっしゃっていて、数えたら30体を超えていました。増えすぎて困っているというより、何体あるのかを知らないまま来た状態でした。
顔があるものは、物として扱いにくい
ぬいぐるみには目と口があります。それだけのことなのに、袋に入れるときに頭が下を向くと直したくなりますし、上に何かを重ねると苦しそうに見えてきます。服やタオルを同じように重ねても、そんなふうには思いません。
現場で何度も見てきたのは、手が止まる場所がほかの物と違うところです。要るか要らないかを決める手前で、そもそも物としてつかめない。つかめないので袋にも入らないし、決める場面までたどり着かないんです。ほかの物なら一人で決められる方でも、ぬいぐるみだけは家族に聞いてから決めることがあります。
そこで止まる自分を弱いと感じる方は多いです。ぬいぐるみが捨てられない心理は、執着という言葉で説明されがちです。でも実際には、思い出やまた使うかもしれないという見通しが混ざっていますし、決めることそのものの疲れで止まっていることもあります。ひとまとめにくくられると、そうした事情がぜんぶ性格の問題にされてしまいます。その一語をほどく話は「捨てられない」を執着で片づけない理由に分けて書きました。物に気持ちがくっついていく仕組みのほうを知りたい方には、物への愛着の話もあります。
「捨てられない」は、10月3日に発売した『片づけられない自分を、だめだと思う前に』で取り上げた13の言葉のうちの一つでもあります。
増え方に、自分の意思が入っていない
並べてもらうと、自分でお店で選んで買った物がいちばん少ないお宅がほとんどです。もらい物、景品、雑誌の付録、イベントの記念品、ゲームセンターで取った物。自分の意思で家に入れた物は30体のうち3体だけということもありました。
自分で選んだ物なら、手放すときの基準も自分の中にあります。好きで買ったのか、もう好きではないのか。ところがもらった物にはその基準がありません。くれた人の気持ちが先に立って、自分がどう思っているかが後ろに回ります。
やってみてほしいのは出どころで分けることです。自分で選んだ物、人からもらった物、気がついたら家にあった物の3つに分けるだけで、迷う場所がはっきりします。たいてい迷うのは人からもらった物のほうです。
お子さんのぬいぐるみだと、これに「まだ好きかもしれない」が重なってさらに決めにくくなります。同じ迷い方は服でも起きるので、子供服が捨てられないときの残す数の決め方もあわせて読んでみてください。
残す数は、置き場所の広さで決まる
何体まで残すかを数から決めようとすると、なかなか決まりません。10体でも20体でも、その数字に根拠がないからです。先に場所を決めて、そこに入る分を残すほうが決めやすくなります。
かご一つ、棚1段、ベッドの上。どれでもかまいません。お子さんの物なら本人に「このかごに入るだけ」と伝えて選んでもらうと、こちらが思うより早く決まることがあります。大人が勝手に選ぶとあとでもめることが多いですが、自分で決めた分は本人も納得しやすいです。
かごを決めたあとは、1体増えたら1体出す入れ替えにしておくと、また増えていくのを止められます。お子さんには「入るだけ」と言うより、この言い方のほうが通じることがあります。
今日できるのは家じゅうから集めて1か所に並べるところまでです。数が見えると、多いか少ないかを自分の感覚で判断できます。入りきらない分をその日に決めなくてもかまいません。いったん箱に入れて、日をあけてから見るほうが決めやすい方もいます。
写真に残してから手放す
写真を撮っておくのは手放す前にできることのひとつです。1体ずつ正面から撮る方もいますし、全部を床に並べて1枚だけ撮る方もいます。お子さんが抱っこしているところを撮ると、あとで見返したときに思い出のほうが残ります。
撮り方は簡単で、明るい窓際で無地の布か床の上に置いて、顔が見える角度から撮るだけです。名前や買った年を書いた紙を一緒に置いて撮ると、あとで誰の物だったか思い出せます。お子さんが描いた絵と並べて撮る方もいました。撮った写真はその日のうちにアルバムを作ってまとめておくと、あとで探さずにすみます。
ただ写真を撮れば手放せるとはかぎりません。撮ってから気持ちが決まる方もいれば、撮っても変わらない方もいます。変わらなかった物は残す側に入れておいてかまいません。
渡す先があるとき、ないとき
譲る相手が思い浮かぶなら、それがいちばん早い方法です。ただ、相手にとっては断りにくい話でもあります。まとめて持っていくより、写真を送って「この中にほしい物があれば」と聞くほうがお互いに気が楽だと思います。
施設や団体に送る方法もあります。この場合に大事なのは受け入れの条件を先に確かめることです。洗えるかどうか、においやシミ、大きさ、電池が入っているかどうかで、受け取れる物と受け取れない物が分かれます。条件は送り先ごとに違いますし、時期によっても変わります。確認しないまま送ってしまうと、受け取った側が費用をかけて手放すことになります。
問い合わせるときは、何を、何点、どんな状態の物か、送料はどちらが持つかの4つを書いて送ると話が早いです。状態がよくてキャラクターがはっきり分かる物は、売れることもあります。売る・譲る・寄付するの向き不向きは、寄付・売る・譲るの選び方にまとめてあります。
渡す先が見つからないことのほうが実際には多いです。半年ほど探して決まらないなら、探すのをいったんやめてもいいと思います。
お別れの形は一つじゃない
袋にそのまま入れるのがどうしても無理なら、紙や布に包んでから入れる方法があります。包装紙でも、使っていないタオルでも足ります。顔が見えなくなるだけで手が動く方はけっこういます。
声をかけてから手放す方もいます。ありがとう、ここまでで終わりにするね、と言ってから袋に入れる。家の中でやる分には誰にも知られません。
1体ずつ向き合うとしんどい場合は、まとめて一度に手放すほうが楽なこともあります。自分では袋に入れられないので家族に頼んで、そのあいだ別の部屋にいたという方もいました。供養という形を選ぶ方もいます。
出し方は住んでいる地域で違うので、自治体の分け方を確かめてから出してください。ほかにどんな手放し方があるかは、捨てる以外の手放し方に一通り書いています。
片づけを捨てることから始めない進め方は、『捨てるからはじめない 片づけのプロは何を「捨てた」のか』という本に書きました。ぬいぐるみのように数を減らすことが目的にならない物ほど、残すものから選ぶ順番のほうが手が動きます。
思い出の物だけで手が止まるなら、家を見せずにオンラインで話すだけのはじめの一歩プランもあります。

ライフオーガナイザー®として、特にADHD傾向のある方や片づけが苦手な方をサポート。完璧主義や罪悪感、思い込みなど、片づけの障害となる心理的要因に寄り添い、無理なく続けられる仕組みづくりを提案しています。
2012年からこの分野を学び、2023年にアメリカの専門団体「Institute for Challenging Disorganization®」にて日本人初のCPO-CDを取得。
「片づけの負担を減らし、自分らしい人生を楽しめる人を増やしたい」との思いで活動中。




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