「読んでない本が捨てられないんです」と聞かれたことがあります。オーガナイズサポートで本棚の前に立ったとき、ご本人のほうから出てきた質問でした。
私の答えは「読むつもりがまだ残っているなら、置いておいていいと思います」でした。ただそれで終わると本棚は動かないので、読んでいない本だけを抜き出してもらいました。棚1段には収まりませんでした。ご本人は「そんなにあると思っていなかった」と言っていました。
本は手放しにくい物の代表です。減らしたほうがいいと自分で思っていても、1冊持つと手が止まる。しかも止まる理由は本の種類によって違うので、棚の全部をまとめて「何冊まで」と決めようとすると、たいてい途中で動けなくなります。
本を手放しにくいのは、中身を手放す気がするから
本を手放すときに引っかかっているのは、紙ではありません。そこに書いてあったことや読んで考えたことまで一緒に出ていく気がします。中身を手放す感じがするから、手が止まります。
オーガナイズサポートに伺っていても、本棚の前だけは進み方が変わります。服なら1段を数分で終える方が、本だと1冊を持ったまま黙ってしまう。表紙を見て少しめくって、また戻す。そのあいだ何を考えていたのか聞いてみると、「これを手放したら、もう二度と読まない気がする」という答えがよく返ってきます。
読んで覚えていることは本がなくなっても残りますし、覚えていないことは手元に置いていても出てきません。ただ、そう言われて納得できるなら最初から困っていないですよね。
実際に手を止めているのは、読んでいない本・読み終わった本・ときどき引く資料・思い出の本が同じ棚に並んでいることのほうです。理由の違う4種類を1冊ずつ同じ基準で判断しようとしているから、疲れます。
手放せないこと自体を性格の問題として受け取ってしまう話は物が捨てられない原因は、性格じゃないに書きました。
読んでいない本には、これから読むつもりが一緒に置いてある
読んでいない本が減らないのは、本と一緒に「これを読もう」と思った自分の予定が置いてあるからです。手放すと、その予定を取り下げることになります。読み終わった本より未読のほうが重いのは、ここだと思っています。
買ったときのことを思い出すと、理由ははっきりしています。仕事で必要になりそうだった、人にすすめられた、話題になっていた。そのときの自分にはどれもちゃんとした理由でした。積読が減らないのを意志の弱さで説明する言い方をよく見かけますが、実際には買った理由のほうが古くなっているだけのことが多いんです。
読んでいない本だけを棚から抜いて、床でもテーブルでもいいので1か所に集めてみてください。減らさなくていいです。集めると、自分がどれくらいの「読むつもり」を抱えているかが目で見えます。10冊なら気になりませんが、50冊あれば重く感じるのが当たり前です。
そのうえで、これから3か月のあいだに読む本を3冊だけ選びます。残りは棚に戻してかまいません。3冊を選んだ時点で、ほかの本については「いま読む本ではない」と自分で決めたことになります。手放すかどうかを考えるのは、そのあとで間に合います。
読み終わった本と、また引く資料は分かれる
読み終わった本を残している理由は、だいたい2つに分かれます。読んだ記録として残しているか、これからも引くために残しているか。この2つは残す基準が違うので、分けたほうが決めやすくなります。
読んだ記録として残す
棚を見れば自分が何を読んできたか分かる、という理由で残している方は多いです。これは残す理由として十分だと思います。
ただ記録として残したいだけなら、形は本でなくてもかまいません。手放す前に背表紙を並べて写真を撮っておけば、棚ごと残せます。読書記録のアプリに登録してから手放す方もいます。この形でいいと分かると、手放せる冊数が急に増えることがあります。
写真では足りないと感じたなら、それは本の形で持っていたい本です。残してください。
引くのは年に何回か
資料として残している本は、実際に引いた回数で決められます。思っている回数と実際の回数はよくずれるので、数えてしまったほうが早いです。
やり方は簡単で、資料になりそうな本の背に小さい付箋を貼って、引くたびに日付を書き足します。半年もすれば、日付が増えていく本と真っ白なままの本に分かれます。真っ白な本をすぐ手放せるとはかぎりませんが、少なくとも「よく引く本」という思い込みは外れます。
調べものの多くがインターネットで済むようになって、手元に置く意味が変わった本もあります。中身を使うために置いていた本なら、使わなくなった時点で役目が変わっています。
思い出の本は、数を決めて残す
内容ではなく、その本があった時期のほうが大事な本があります。子どもに毎晩読んだ絵本や、受験のときに机に置いていた本。こういう本を内容で判断しようとしても、まず決まりません。
思い出の本は、数を決めるほうが早く進みます。棚1段、あるいは箱一つ。先に入れ物を決めておくと、その中でどれを残すかという比べ方になるので、全部残すか全部手放すかを決めなくて済みます。
数を決めると、思い出だと思って置いていた本のなかに「これは思い出ではなく、いまも引いている本だ」と分かるものが出てきます。記念のつもりで置いていた本が、数えてみるといちばんよく開く本だった、という方もいました。ためこみについて読んできた本はためこみについて書かれた本のリストにまとめてあります。
減らす前に、本棚のどこに何を置くかを分ける
未読・読んだ記録・引く資料・思い出の4つを棚の上で分けてしまうと、迷う回数が減ります。
冊数を減らす前に、区画を決めます。棚1段を未読、1段を引く資料、箱一つを思い出という具合です。分けると、どの区画があふれているかが見えます。読み終わって置いてあるだけの本が棚の半分を占めていた、というお宅もありました。全体の冊数を眺めているときには気づかない偏りです。
区画ごとに上限を決めると、全体で何冊という決め方より動きます。未読の段があふれたら、新しく買った本を入れるために1冊選ぶ。入れ替えるだけなので、まとめて減らす日をわざわざ作らなくて済みます。
分け方はこの4つでなくてかまいません。著者別に並べている方もいますし、読む場所で分けている方もいます。何を基準に分けるかは人によって違うので、分類の軸の決め方も見てみてください。自分の分け方がすでにあるなら、そちらを使ったほうが続きます。
今日やるなら、棚1段だけで試せます。その段の本を全部出して、4つの山に分ける。それだけで、自分の棚に何が多いのかが分かります。
手放し先を先に決めておくと、判断が軽くなる
出口が「捨てる」しかないと、1冊ごとの判断が重くなります。読んでいない本を資源ごみに出すのは、たいていの人が嫌です。だから決まらないままになります。
先に手放し先を決めておくと、問いの中身が変わります。捨てるかどうかではなく、この本はどこへ出すかを考えることになるからです。
買い取りに出すなら、買い取り金額を少しでも上げる出し方を別の記事に書いています。値段は期待しすぎないほうがいいですが、本は重いので家から運び出さずに済むのは助かります。人に譲ることもできますし、寄付を受けている先もあります。捨てる以外の手放し方にまとめてあるので、自分に合いそうな方法を一つだけ決めておくと、そのつど調べる時間が要らなくなります。
段ボールを1箱、玄関か廊下に置いてしまうのも効きます。「出す箱」と決めておいて手放すと決めた本をそこに入れていき、箱が埋まったら送ります。1冊ずつ運び出さなくていいので、決めた日にまとめて動かなくて済みます。
箱がいっぱいになるまでに気が変わって、戻す本が出てくることもあります。出したり戻したりしながら決まっていくので、それでかまいません。
本を減らすところから始めない進め方については、『捨てるからはじめない 片づけのプロは何を「捨てた」のか』という本に書きました。手放す前に何を見ておくといいのかを現場の話とあわせてまとめています。
本棚の前だけで手が止まるなら、家を見せずにオンラインで話すはじめの一歩プラン(11,000円)もあります。

ライフオーガナイザー®として、特にADHD傾向のある方や片づけが苦手な方をサポート。完璧主義や罪悪感、思い込みなど、片づけの障害となる心理的要因に寄り添い、無理なく続けられる仕組みづくりを提案しています。
2012年からこの分野を学び、2023年にアメリカの専門団体「Institute for Challenging Disorganization®」にて日本人初のCPO-CDを取得。
「片づけの負担を減らし、自分らしい人生を楽しめる人を増やしたい」との思いで活動中。




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