ダイニングテーブルの端に、郵便物の束が置いてある。封を切ったものと切っていないものが混ざっていて、下のほうには去年の紙も残っている。オーガナイズサポートで伺うお宅でよく見る光景です。
そこに手を伸ばすと、たいていこう言われます。「それ、捨てていいのか分からなくて置いてあるんです」
服やタオルなら手が動く方でも、紙の前では止まります。
捨てられないのは、あとで困るのが怖いから
紙を残す理由は好きだからではありません。あとで「あの書類を出してください」と言われたときに出せなかったら困る、という不安のほうです。服は気に入っているから残りますが、紙は困るかもしれないから残ります。
この不安は的外れではなくて、取っておいてよかった紙は実際にあります。厄介なのは、どれがその1枚なのかが束を開ける前には分からないところです。分からないので全部残る。全部残すといざ必要になったときに探せなくて、結局その1枚が出てこない。書類が多いお宅ほど、探しものの時間が長くなります。
紙を手放せない自分を「決断力がない」と責めてしまう方によく会いますが、捨てられないことを性格の問題として見るのには無理があります。そのあたりの事情は「捨てられない」を性格の話にしないほうがいい理由で書いています。
また手に入る紙と、手に入らない紙
書類を分ける軸は一つで足ります。なくしたときに、もう一度手に入るかどうか。
もう一度手に入る紙は思っているより多いです。店でもらった案内、ポストに入っていたチラシ、会議で配られたコピー、ウェブでも同じものが読めるお知らせ。この手の紙はなくしても取り直せます。
手に入りにくいのは原本と呼ばれる紙のほうで、署名や押印のあるもの、契約の番号が書いてあるもの、1枚しか発行されていないものが当たります。手紙や子どもが描いた絵のように、代わりのないものもここに入ります。窓口に問い合わせれば再発行してもらえる場合もありますが、手続きに時間がかかることもあるので、手元にあるほうが早いです。
この2つを分けるのに、中身を読む必要はありません。差出人と紙の見た目と、番号が振ってあるかどうかでだいたい分かれます。
物を「誰からもらったか」「いつのものか」といった軸で分け直す考え方は分類の軸に書きました。書類はそのなかでも軸を立てやすくて、「また手に入るか」の1本でほとんど分けられます。
『捨てるからはじめない 片づけのプロは何を「捨てた」のか』という本では、捨てる物を探すのをやめて「選ぶ」から始める話を書きました。書類も同じで、捨てる紙を探すと手が止まりますが、残す紙を選ぶと進みます。
束から1枚だけ取って、また手に入る紙かどうかを考えてみてください。中身を読まなければ3秒で決まります。
期限のある紙は、期限を書いて箱に入れる
「期限のある紙」は、いつまでに何かをする紙です。申込の締切、返信の必要なはがき、支払いの案内、使える期間の決まったクーポン、行事の出欠。この種類の紙は期限が過ぎた時点で迷わず手放せます。判断の要らない紙です。
やることは3つ。
- 紙の右上に、期限の日付を大きく書く
- 箱を一つ決めて、そこに入れる
- 月に1度、箱をひっくり返して日付の過ぎた紙を抜く
読むのと日付を見るのは別の作業で、日付だけなら1枚につき数秒で終わります。書類が苦手な方ほど、この作業だけを先に通すと束が目に見えて減ります。
あるお宅で、テーブルの端に積まれた束から期限のある紙だけを抜いたことがあります。残った紙は半分以下になりました。抜いた紙のほとんどは、すでに期限が過ぎていました。
いちばん溜まるのは、期限のない紙
期限が書いていない紙には、いつまで経っても判断のきっかけが来ません。だから溜まります。説明書、保険の書類、学校や職場から届く案内。手が止まっているのはたいていこのあたりです。
説明書はメーカーのサイトで見られることが多い
家電を買うと分厚い説明書がついてきて、引き出しの1段が説明書で埋まっているお宅もあります。
いまは型番で検索するとメーカーのサイトにPDFが置かれていることが多いです。ただ、古い製品や海外のものは見つからない場合もあるので、まとめて全部手放すのは勧めません。
一つだけ試してみてください。手元の説明書から1冊選んで、表紙の型番で検索する。見つかったら、そのメーカーの分だけ手放す。見つからなければ残しておく。保証書とレシートは説明書と切り離して、まとめて1か所に置きます。
本体に貼ってあるシールにも型番が書かれていることが多いので、紙を手放す前にそこを写真に撮っておくとあとで検索するのが楽になります。
保険は、証券と案内の紙を分ける
保険関係の封筒は毎年届きます。中身は契約の内容が書かれた紙と、案内やパンフレットが混ざっています。
契約の番号が書いてある紙と、それ以外。この2つに分けるだけで、封筒の山はかなり小さくなります。約款のような分厚い冊子は、保険会社のサイトで同じものが読めることが多いです。どれが手元にないと困る紙なのか分からないときは、契約した窓口に聞けます。
分けたあとの置き方は保険書類の収納に書きました。
学校のお便りは、期限だけ写して紙を手放す
お便りには、期限のある話と期限のない話が1枚に混ざっています。提出物の締切と年間の予定とお知らせが、同じ紙に載っている。
期限のある部分だけカレンダーかスマホに書き写して、紙は手放します。全体を残しておきたいときは写真を撮っておく。
冷蔵庫の扉に全部貼っているお宅もありますが、枚数が増えると貼ってあること自体を見なくなります。貼るのは今週の分だけにして、それ以外は箱に入れる。
全部読まないと決められない、から抜ける
書類が進まないいちばんの理由は1枚ずつ読んでしまうことです。読むと中身が気になって、関連することを思い出して、手が止まります。1枚に5分かかると30枚で2時間半になるので、これでは終わりません。
読む前に分けます。見るのは差出人と日付と、期限が書いてあるかどうかだけ。
- 期限のある紙
- また手に入らない紙
- それ以外
「それ以外」は保留の箱に入れて、箱に今日の日付を書いておきます。読むのは分け終わってからです。
この順番にすると、決める回数が減ります。1枚ずつ読んで決めていくと30枚で30回の判断が要りますが、先に分けておけば判断するのは箱ごとになります。決める力にも限りがあるので、回数を減らすほうが早く終わります。
一度に全部やろうとせず、15分だけタイマーをかけて分けてみてください。分けきれなくても、分けた分だけ次が楽になります。書類にかぎらず、家のどこから始めるかが決まらないままなら、どこから手をつけるかの記事もあわせてどうぞ。
書類から片づけを始めないほうがいい理由
家全体の片づけを書類から始めるのは、あまりお勧めしません。
紙は1枚あたりの判断が重いわりに、片づけても見た目が変わらないからです。1時間かけて束が半分になっても、部屋の印象はほとんど同じ。手応えの出ないところから始めると、途中で止まります。服やタオルのように「もう使わない」が見て分かるものから始めたほうが、判断の練習になります。
着手の順番については書類から片づけを始めない理由に書きました。あちらが家のどこから手をつけるかの順番、この記事が書類そのものを残す基準の作り方です。
それでも紙で止まっているなら、範囲を家全体ではなく「テーブルの端の束一つ」まで下げてください。
書類は人に見せにくい物です。名前も金額も契約の中身も書いてあるので、写真を撮って誰かに送ることもしにくい。紙のことだけ誰にも相談できないまま何年も置いてある、というお宅は珍しくありません。
はじめの一歩プランは家を見せなくていい形にしています。オンラインで言葉で話すだけ。写真も送らなくてかまいません。11,000円で1回2.5〜3時間、どの紙の前で止まっているかを話すところから始められます。
今日やるなら、テーブルの端の束から期限のある紙だけを抜いてみましょう。箱はあとから決めても間に合います。

ライフオーガナイザー®として、特にADHD傾向のある方や片づけが苦手な方をサポート。完璧主義や罪悪感、思い込みなど、片づけの障害となる心理的要因に寄り添い、無理なく続けられる仕組みづくりを提案しています。
2012年からこの分野を学び、2023年にアメリカの専門団体「Institute for Challenging Disorganization®」にて日本人初のCPO-CDを取得。
「片づけの負担を減らし、自分らしい人生を楽しめる人を増やしたい」との思いで活動中。




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