散らかった部屋を見て、頭が真っ白になる
「全部やらなきゃ」が脳をフリーズさせる
散らかった部屋を前にして、「どこから手をつけたらいいかわからない」と固まってしまったことはないでしょうか。
テーブルの上には郵便物と書類が積み重なっている。キッチンのカウンターには使いかけの調味料と買い物袋がそのまま。リビングの床には子どもの学用品と、読みかけの本と、たたんだまましまえていない洗濯物。どこを見ても「やるべきこと」が目に入ってきて、頭の中に情報が一気に押し寄せてくる。
そのとき、多くの方がこう感じます。
「全部やらなきゃ」。
そしてその直後に、こう思います。
「でも、どこから?」
この「全部やらなきゃ」と「どこから?」の間で、脳はフリーズしています。やる気がないわけではないのです。むしろ、やらなきゃという気持ちが強すぎるくらいある。なのに、体が動かない。何から始めていいかわからなくて、結局どこにも手をつけられないまま時間だけが過ぎていく。
これは怠けでもなく、先延ばしの問題とも少し違います。先延ばし(課題の開始の困難さ)は「始められない」という問題ですが、今回扱うのはその一歩手前、「何を始めればいいのか決められない」という問題です。
散らかった空間を見渡して、そこにある情報をすべて受け取ってしまう。そのうえで「どの順番で」「何を先に」「どこまでやるか」を瞬時に判断しようとする。その情報量が脳の処理容量を超えたとき、脳は自分を守るようにシャットダウンします。考えることそのものを止めてしまうのです。
これが、「頭が真っ白になる」という状態の正体です。
計画を立てること自体がエネルギーを使う
「計画を立てればいいんでしょう?」と思われるかもしれません。実際、片づけの本にはよく「まず計画を立てましょう」と書いてあります。どの部屋から始めるか。何時間かけるか。ゴールはどこか。それを決めてから動きましょう、と。
その助言は、間違っているわけではありません。ただ、見落とされていることがあります。計画を立てるという行為そのものが、脳にとってはかなりの負荷がかかる作業だということです。
計画を立てるためには、まず現状を把握する必要があります。「今、何がどこにどれくらいあるか」を見渡す。次に、ゴールを想像する必要があります。「どうなっていたら完了と言えるか」を思い描く。そのうえで、現状からゴールまでの道のりを逆算して、ステップに分解し、優先順位をつけて、時間配分を見積もる。
これだけの処理を、片づけを始める前にやらなければならない。いわば「片づけの前の片づけ」です。
そして、もし片づけの対象が自分の部屋全体だったり、何年も手つかずだった場所だったりすると、計画を立てるために把握しなければならない情報量はさらに膨大になります。計画を立てようとする段階でエネルギーが尽きてしまい、実際の作業にたどりつけないということが起きるのです。
「計画を立てればいい」という助言は、計画を立てる力がすでに十分にある人には有効です。しかし、その力に引っかかりがある人にとっては、「計画を立てましょう」と言われること自体がプレッシャーになってしまうことがあります。
だからこそ、「計画を立てる」とはそもそもどんな脳の働きなのかを理解しておくことが大切です。
計画と優先順位づけ(Planning/Prioritization)とは
脳の中で「ロードマップ」を描く力
計画と優先順位づけ(Planning/Prioritization)は、Dawson & Guareの実行機能12要素モデルにおける6番目の要素です。このシリーズの第0回で全体像を紹介した、あの12要素の一つです。
この力は、ひとことで言うと、脳の中でロードマップを描く力です。
「今ここにいる自分」から、「こうなりたいという目的地」まで、どうやってたどりつくかを頭の中で組み立てる。そのとき、どの道を通るか、何を先にやるか、何を後回しにするか、どこで休憩するかを判断する。そういう力です。
Dawson & Guareはこの力を、「目標を達成するためにロードマップを作成する能力であり、途中でどのタスクに集中し、何に注意を払い、何に注意を払わないかを決定する能力でもある」と定義しています(Dawson & Guare, 2018)。
大事なのは、この定義に「何に注意を払わないかを決定する」という部分が含まれていることです。計画を立てるとは、「やること」を決めるだけではなく、「やらないこと」を決めることでもあります。あれもこれもやろうとするのではなく、限られた時間とエネルギーの中で何を優先し、何を後回しにするかを判断する。それが、この実行機能の本質です。
そしてこの力は、前頭前野の働きと深く関わっています。前頭前野は、脳の前方に位置する領域で、思考や判断、計画、意思決定といった高次の認知機能を担っています。Adele Diamondの研究でも、計画と問題解決はワーキングメモリや抑制制御といったコア機能の上に成り立つ「上位の実行機能」として位置づけられています(Diamond, 2013)。つまり、計画を立てるという行為は、実行機能の中でも比較的高度な力を要求するのです。
だからこそ、この力に引っかかりがあると、日常のさまざまな場面で「どこから手をつけていいかわからない」という状態が生まれやすくなります。
片づけの場面で起きている「優先順位の渋滞」
では、片づけの場面では、計画と優先順位づけの力はどんなふうに使われているのでしょうか。
たとえば、週末にクローゼットを整理しようと決めたとします。クローゼットの扉を開けると、中にはハンガーにかかった服、たたんで積まれた服、使っていないバッグ、季節外れのコート、よくわからない紙袋の中身。それぞれが別の判断を求めてきます。
「この服はまだ着る?」「このバッグは使ってないけど高かった」「これは季節ものだから別の場所に移す?」「紙袋の中身は何だっけ、開けてみないとわからない」
一つひとつのモノに対して、「残すか」「手放すか」「移動するか」「保留するか」の判断が必要になります。そしてそれだけではなく、「どのモノから判断するか」という順番の決定も必要です。さらに、「今日はどこまでやるか」「この後の予定との兼ね合いは」「家族に確認が必要なモノはどうする」といった周辺の判断も加わります。
これは、脳の中で複数の判断が同時に渋滞を起こしている状態です。交差点に四方から車が押し寄せて、信号機が壊れてしまったような状態と言えばわかりやすいかもしれません。どの車を先に通すべきか判断できなくなり、すべてが止まってしまう。
私はこれを、お客さまとの片づけの現場で何度も目にしてきました。クローゼットの前で「うーん」と長く考え込んでしまう方。「これ、どうしたらいいですかね」と何度も聞いてくださる方。決して判断力がないわけではないのです。日常の仕事では的確に判断を下している方が、片づけの場面ではなぜか決められなくなる。それは、片づけという作業が要求する判断の量と種類が、脳の処理容量を超えてしまっているからです。
そしてもう一つ、片づけに特有の難しさがあります。それは、「正解がない」ということです。仕事であれば、締め切りや上司の指示が優先順位を決めてくれることがあります。しかし片づけにおいては、何を先にやるかは自分で決めるしかありません。「キッチンからやるべきか、リビングからか」「今日全部やるのか、一箇所だけにするのか」。その判断基準が外から与えられないため、脳はますます迷いやすくなります。
「どこから手をつけていいかわからない」は、能力の欠如ではありません。情報量が脳の処理容量を超えている状態です。そして、片づけという作業の性質そのものが、この渋滞を起こしやすい構造を持っているのです。
こんな背景が関係していることがある
計画と優先順位づけの得意・不得意には、さまざまな背景が関わっています。第0回でお話しした「3つの背景」を、この実行機能に焦点を当てて見ていきましょう。
もともとの脳の特性として
発達特性のある方、特にADHDの傾向がある方の場合、計画と優先順位づけに困難を感じやすいことが知られています。
ADHDの特性の一つに、「時間の見通しが立てにくい」というものがあります。「このタスクにどれくらいかかるか」を見積もることが難しく、結果として現実的な計画を立てにくくなります。また、目の前にあるすべての情報が同じ重みで飛び込んでくる、いわば「情報のフラット化」が起きやすい傾向もあります。普通なら「これは今やること、これは後でいいこと」と自動的に重みづけされるはずの情報が、すべて同じ緊急度で脳に入ってくるため、優先順位をつけること自体が大きなエネルギーを要求します。
Dawson & Guare(2009)は『Smart but Scattered』の中で、計画と優先順位づけが弱い人の特徴として、「複数の課題があると何から始めていいかわからなくなる」「プロジェクト全体を見渡して手順を組み立てるのが難しい」「『とりあえず始める』はできても、効率的な順序で進められない」といった傾向を挙げています。
ただし、大切なことを繰り返しておきます。こうした傾向は、ADHDのある方に限った話ではありません。発達特性の枠に当てはまらない方でも、「段取りを考えるのが本当に苦手」「マルチタスクになると途端にパニックになる」という方はたくさんいます。計画と優先順位づけの力は、連続的なグラデーションの中で、誰にでも得意な範囲と苦手な範囲があるものです。
高次脳機能障害では
脳卒中や交通事故、脳の手術後などで高次脳機能障害が生じた場合、計画と優先順位づけの力に大きな変化が起きることがあります。
特に前頭葉にダメージを受けた場合、この力への影響は顕著です。以前はてきぱきと段取りを組んで家事をこなしていた方が、「何をどの順番でやればいいか、頭の中で組み立てられなくなった」とおっしゃることがあります。料理であれば、ごはんを炊いている間におかずを作り、その間にお味噌汁も温めるという並行処理は、実は高度な計画力を使っています。それが、一つの作業しか追えなくなったり、手順を飛ばしてしまったりするようになる。
私がサポートに入った高次脳機能障害のある方のお宅では、片づけの手順を紙に書き出して、「次にやること」を一つだけ見える状態にするという工夫を一緒に作ったことがあります。頭の中で組み立てることが難しくなったなら、その機能を外に出してしまえばいい。脳の中のロードマップを、紙の上のロードマップに置き換えるのです。
以前できていたことが同じようにはできなくなる。それはとても戸惑うことです。しかし、「できなくなった」のではなく、「やり方を変える必要がある」のだと私は思っています。脳が変わったなら、やり方を脳に合わせて変えていけばいい。その工夫を一緒に考えるのが、ライフオーガナイザーとしての私の仕事です。
疲れ・ストレス・加齢などでも
計画と優先順位づけの力は、体調や環境の影響を強く受けます。特に、疲労やストレスが蓄積しているとき、この力は著しく低下します。
仕事で大きなプロジェクトを抱えている時期や、家族のケアで心身ともに消耗している時期。そんなとき、普段なら難なくこなしている段取りが急にできなくなることがあります。「週末に片づけよう」と思っていたのに、いざ週末が来ると「何からやればいいかわからない」と座り込んでしまう。それは脳が、日常の判断や仕事の段取りにすでにエネルギーを使い果たしていて、片づけの計画にまで回す余裕がなくなっている状態です。
産後もそうです。赤ちゃんのケアは予測不能な連続です。「次に何が起きるかわからない」状況の中で生活していると、脳は常に臨機応変モードで稼働しているため、先を見通して計画を立てるモードに切り替えること自体が難しくなります。「前はできていた段取りが全然できなくなった」と戸惑うお母さんに、私はこうお伝えしています。「それは脳が今、いちばん大事なことに全力で向き合っている証拠です。計画力が落ちたのではなく、計画力の使い先が変わっただけです」と。
加齢による変化も見逃せません。年齢を重ねると、複数のことを同時に処理する力が少しずつ変化していきます。「若い頃はいくつもの作業を並行してできたのに」と感じることがあるかもしれません。それは自然な変化であり、「衰えた」と悲観する必要はありません。同時にやろうとすることを減らし、一つずつ順番にやる。そうやって脳に合わせたやり方に切り替えていくことで、計画と優先順位づけの力を無理なく使っていくことができます。
最初の一手を決めるための暮らしの工夫
ここからは、「どこから手をつけていいかわからない」というフリーズ状態を解くための、具体的な暮らしの工夫を紹介します。
大切な前提を一つ。ここで紹介するのは「こうすべき」という正解ではなく、「こういうやり方もありますよ」という選択肢です。100人いたら100通りの合い方がありますから、ご自身の脳のクセや暮らしの状況に合いそうなものを、一つでも見つけていただければと思います。
「目に入る場所」から始める
計画を立てることが難しいとき、いちばん効果的なのは「計画を立てなくていい始め方」を用意することです。
その一つが、「目に入る場所から始める」というやり方です。
玄関のたたき。ダイニングテーブルの上。洗面台のまわり。こうした場所は、毎日必ず目に入る場所であり、面積も比較的小さい。「家全体をどうするか」を考える必要がなく、目の前のその場所だけに意識を向ければいい。計画を立てるというプロセスを丸ごと省略できるのです。
私がお客さまのお宅に伺うとき、最初に手をつける場所として玄関をおすすめすることが多いのは、この理由もあります。玄関は面積が限られているので「全部やる」のハードルが低く、毎日出入りするたびに変化を実感できる。その「変わった」という感覚が、次の場所に手をつける力になります。
「どこから始めようか」と考え込む代わりに、「今、目に入った場所」から手を動かしてみる。計画は後からついてきます。
判断を3択以内に絞るルール
「優先順位の渋滞」が起きるのは、判断すべきことが多すぎるからです。であれば、判断の数そのものを減らしてしまえばいい。
具体的には、「一度に見るのは3つまで」というルールを自分に設けます。
たとえば、散らかったリビングを見渡すのではなく、まずテーブルの上だけを見る。テーブルの上にあるモノの中から3つだけ手に取って、一つずつ「どこにしまうか」を決める。3つ終わったら、次の3つ。
あるいは、「今日やる場所」の選択肢を3つまでに絞る。「家全体のどこからやるか」ではなく、「キッチンカウンター、洗面台、テーブルの上。この中から一つ選ぶなら?」と自分に聞く。選択肢が3つなら、脳は比較的楽に判断できます。
この「3」という数字には根拠があります。人間の脳が瞬時に把握できる数、いわゆるマジカルナンバーは3から4程度とされています。選択肢が5つ、7つと増えるにつれて、脳の処理負荷は急激に上がります。逆に言えば、選択肢を3つ以内に絞ることで、脳にやさしい判断環境を作ることができるのです。
私のお客さまの中にも、この「3択ルール」を暮らしに取り入れて、片づけのハードルがぐっと下がったという方がいらっしゃいます。「全部やろう」を手放して、「3つだけ」に集中する。それだけで、渋滞していた交差点に信号機がつくような感覚だとおっしゃっていました。
「完璧な計画」より「今日やること1つ」
計画を立てること自体がエネルギーを使うと先ほどお話ししました。であれば、完璧な計画を立てようとしなくていいのです。
「家全体の片づけ計画を立てて、どの部屋をどの順番でやるか、何日かけるか、どこに何をしまうか、全部決めてから始める」。そうしたいと思う気持ちはよくわかります。でも、その計画を立てようとして止まってしまうくらいなら、計画は「今日やること1つ」だけでいい。
「今日は、キッチンカウンターの上だけ」。
「今日は、靴箱の一段目だけ」。
「今日は、冷蔵庫のドアポケットだけ」。
それでいいのです。たった一つでも、「やった」という事実が残ります。その事実が、翌日の「もう一つ」につながっていきます。
逆に、完璧な計画を立てようとすると、往々にして「こんなに大変なら今日はやめておこう」という結論に至ります。計画の精度を上げようとするほど、実行のハードルが上がるという皮肉な構造です。
私は「計画は引き算で」とよくお伝えしています。「あれもこれも」ではなく、「今日はこれだけ」。脳がフリーズしない範囲にまで情報量を削ぎ落とすことが、実は最も効率のよい計画です。
カテゴリではなく場所で区切る
片づけの方法としてよく紹介されるのが、「カテゴリ別に分ける」というやり方です。衣類は衣類、書類は書類、思い出のモノは思い出のモノ。カテゴリごとに家じゅうから集めてきて、一気に判断する。
この方法は、実行機能が十分に働いている状態ではとても効率がいいやり方です。しかし、計画と優先順位づけに引っかかりがある場合、この方法はかえって難しくなることがあります。
なぜなら、カテゴリ別に進めるには、まず「自分の家にその カテゴリのモノがどこにどれだけあるか」を把握しなければなりません。衣類がクローゼットだけにあるとは限りません。リビングの椅子の上にも、脱衣所にも、子ども部屋にもある。それを全部集めてくるというのは、家全体の空間をまず頭の中に展開して、カテゴリという軸で横断的に情報を整理するという、非常に高度な計画力を要する作業です。
そこで私がお客さまにご提案するのが、「カテゴリではなく場所で区切る」というやり方です。
ライフオーガナイズでは、「空間のオーガナイズ」という考え方を大切にしています。この部屋の、この棚の、この段。そういう物理的な場所を単位として、その中にあるモノだけを対象にする。カテゴリをまたいで家じゅうを歩き回る必要がないので、脳の負荷がぐっと下がります。
「この引き出しの中だけ」「このカゴの中だけ」「この棚の上だけ」。場所で区切ることは、脳に「ここだけ見ればいい」という明確な境界線を示すことです。計画を立てなくても、「ここを開けて、中にあるモノを見る」だけで始められる。
計画と優先順位づけに引っかかりやすい方にとって、空間単位で区切るやり方は、脳の仕組みに合った自然なアプローチだと私は感じています。
誰かと一緒にやる効果
ここまで、自分一人でもできる工夫を紹介してきました。最後にもう一つ、とても効果的な方法をお伝えします。それは、「誰かと一緒にやる」ということです。
計画と優先順位づけの力に引っかかりがある場合、その力を自分の脳だけでまかなおうとするのではなく、外部の力を借りるという選択肢があります。
いちばん身近なのは、家族や友人に「一緒にやろう」と声をかけることです。一人だと「どこから手をつけよう」とフリーズしてしまう場面でも、隣に誰かがいるだけで動き出せることがあります。これは「社会的促進」と呼ばれる現象で、他者の存在が行動のきっかけになるという、心理学でもよく知られた効果です。
また、誰かと一緒にやることで、計画を立てるプロセスを自然に分担できるというメリットもあります。「じゃあ私はこっちの棚をやるから、あなたはあっちの引き出しを」というふうに、相手がいることで自然と役割分担が生まれ、「全部を自分で計画しなきゃ」という負荷が軽くなります。
そしてもう一つの選択肢が、ライフオーガナイザーのような専門家と一緒に取り組むことです。
ライフオーガナイザーの仕事の大きな部分は、実は「計画を立てること」そのものです。お客さまの暮らしの状況をヒアリングし、何を先にやるかを一緒に考え、当日の作業の段取りを組む。つまり、「計画を立てる」という実行機能を、脳の外に委ねることができるのです。
「計画を立てるのが苦手なら、計画を立てることが得意な人に手伝ってもらえばいい」。これはとてもシンプルな考え方ですが、片づけの現場では非常に有効です。お客さまご自身は判断する力をお持ちです。ただ、その判断を「どの順番で、何から」求められるかによって、発揮できるかどうかが変わる。だから、順番を整理して一つずつ判断を差し出していくのが、私たちの役割です。
「誰かに頼る」ということに抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。「自分でできないとダメだ」「大人なんだから一人でやらないと」。そう感じるのは自然なことですが、脳の仕組みから考えれば、自分の引っかかりやすい部分を外部の力で補うのは、とても理にかなった工夫です。メガネをかけることが「自分の目に頼れていない」ことにならないのと同じです。脳の特性に合った道具やサポートを使うことは、甘えではなく、知恵です。
「どこから手をつけていいかわからない」。
その言葉の裏側には、「全部やらなきゃ」と思う真面目さがあり、「ちゃんと計画を立てなきゃ」という責任感があります。だからこそ、情報量に圧倒されて動けなくなる。
でも、完璧な計画は必要ありません。目に入る場所から。3つだけ。今日はこれ一つだけ。それで十分です。
脳がフリーズするのは、処理しきれない量の情報を一度に受け取っているからです。その量を減らしてあげれば、脳は動き出せます。
次回、第4回のテーマは「感情のコントロール」。モノに気持ちが絡まって手が止まるとき、脳の中で何が起きているのか。思い出のモノを手に取ったときの切なさ、家族のモノに触れるときの複雑な感情。そうした「気持ちの揺れ」と片づけの深い関係を、一緒に見ていきます。
出典・参考文献
- Dawson, P. & Guare, R. (2018). Executive Skills in Children and Adolescents (3rd ed.). Guilford Press.
- Dawson, P. & Guare, R. (2009). Smart but Scattered. Guilford Press.
- Diamond, A. (2013). Executive Functions. Annual Review of Psychology, 64, 135-168.
- 森口佑介 (2019).『自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学』講談社現代新書.

ライフオーガナイザー®として、特にADHD傾向のある方や片づけが苦手な方をサポート。完璧主義や罪悪感、思い込みなど、片づけの障害となる心理的要因に寄り添い、無理なく続けられる仕組みづくりを提案しています。
2012年からこの分野を学び、2023年にアメリカの専門団体「Institute for Challenging Disorganization®」にて日本人初のCPO-CDを取得。
「片づけの負担を減らし、自分らしい人生を楽しめる人を増やしたい」との思いで活動中。




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