左利きの画家は、本当に「感覚派」だったのか

6月21日(日)に開催する利き脳片づけ収納術講座の準備をしているときのことでした。

利き脳片づけ®とは、日本ライフオーガナイザー協会が片づけを進める上でのヒントの1つとして提案しているもので、利き手や利き足のように脳にも優位に働きやすい利き脳があるというものです。
この利き脳は情報のインプットやアウトプットの際に影響するので、物の出し入れや収納用品の使い心地にも影響があるというものです。

わたしはこの利き脳を考えるときに、単に片づけ術としてだけでなく、世の中がどう見えているのか人による差異を知るためのヒントとして捉えています。

そんなことをつらつらと考えながら家事をしていたときのこと、ふと思いました。

右脳が感覚で、左脳が論理だとしたら、画家の作品にもその傾向が出るのかな。

利き脳が右なら感覚的、左なら論理的と説明することが多いです。

わたしの仮説:右脳は感覚、左脳は論理だとしたら

もし、左利きの場合に感覚的な右脳が優位に働くとしたら感覚的な絵を描くのか?右利きの場合は左脳優位で論理的な絵を描くのか? その対応関係がもしあるなら、いちばん見やすいのは、作品がたくさん残っている画家たちじゃないだろうか。

歴史に名を残した画家なら、利き手の記録もあるはずです。作品も山ほどある。「感覚的」「論理的」というラベルも、なんとなく貼れそうです。

もしそうだったら面白いな、くらいの気持ちで、22人の画家を並べてみることにしました。

画家22人を並べてみたら、最初に出てきた数字

ところが、並べる前に、ひとつの研究を見つけて立ち止まりました。

フランスの眼科医で美術史研究もしていたフィリップ・ランソニーという方が、1990年代に500人の画家を組織的に調べた記録です。左利きと判定された画家は14名。割合にして、2.8%でした。

え、そんなに少ないの。

一般の人の左利き率は、およそ10%と言われています。500人を集めたデータで、左利きはむしろそれより低かった。「画家には左利きが多い」という素朴な印象に、最初の冷や水が浴びせられた瞬間でした。

ここでもうひとつ、面白いことに気づきました。

世界の右利き率は、約90%です。もし利き手と利き脳が連動しているなら、右利きの人は左脳が優位ということになり、世の中は左脳タイプだらけになるはずです。でも、JALOの利き脳タイプチェックを見ていると、実際にはそうなっていません。割合の傾向はあれど4つのタイプにちゃんとばらけている。

つまり、利き手を動かす脳の回路と、利き脳で言う「考え方の傾向」は、そもそも別の系統なのかもしれない。利き手だけで人の思考タイプが決まるなら、右利き90%の世界は、もっと偏った景色になっているはずです。

「左利き画家の神話」は、もしかしたらちがうのかも?

ピカソとゴッホは、右利きでした

たとえば、ピカソやゴッホ。「天才=左利き」のリストで、なんとなく名前が挙がる2人です。調べてみたら、2人とも右利きでした。

ピカソには、自分の左手をモデルにして作った石膏作品が残されています。右利きの彼が、左手を観察対象として眺めたからこそ作れたもの。ゴッホも、ゴッホ美術館の公式FAQで「右利き」と説明されています。

「感覚派の極致」と呼ばれる作品を残したふたりが、実は右利きだった。

左利きの画家に多かったのは、感覚ではなく幾何だった

では逆に、左利きが確かな画家たちは、どんな絵を描いたのでしょうか。並べてみると、思っていたのと違う景色が見えてきました。

レオナルド・ダ・ヴィンチ。解剖学スケッチと設計図のような精密さで知られています。M.C.エッシャー。数学的で幾何学的、無限を主題にした「描く手」「上昇と下降」の作者です。ハンス・ホルバインの精密な肖像写実。パウル・クレーの幾何学と色彩理論。

共通しているのは「感覚的」ではなく、「精密」「幾何学」「数学的」。仮説とは、ちょうど逆の傾向でした。

あー、そう見ると、確かに。

もちろん、サンプル数の小さな観察にすぎず、ひとつの傾向に過ぎません。それでも、仮説とは逆の景色が見えてきたことは、小さな驚きでした。

では、人を理解する軸はいくつあればいいのか

3つの意外を並べてみました。画家の左利き率は意外と低く、感覚派の代表のような2人が右利きで、左利きの画家には幾何学が多かった。そして、世界の90%が右利きなのに利き脳タイプは偏っていない。どれも、1軸では説明できそうにありません。

JALOの利き脳片づけ®は、すでに「インプット脳×アウトプット脳」の2軸で人を見ています。1軸ではなく、2軸。それだけでも、人の見え方はぐっと立体的になります。海外には、もっと細かい軸で人を見る考え方もあるそうです。

講座で出会う「自分の入口」

もし、自分の中の利き脳を実体験として探してみたい方がいらっしゃったら、片づけという日常の動作の中で、自分の入口を見つける場として、JALOの利き脳片づけ収納術講座も用意しています。

ここでひとつだけ、お伝えしておきたいことがあります。

こういったタイプ分けを知ったときに、そこで紹介された方法をそのまま取り入れて、なぜかしっくりこないということもあります。利き脳タイプは「あなたの正解はこれ」というラベルではなく、人によって合う方法が違うことを示すヒントです。

自分にしっくりくるやり方を見つける窓として、使ってもらえたら嬉しいです。

吉村

ライフオーガナイザー®として、特にADHD傾向のある方や片づけが苦手な方をサポート。完璧主義や罪悪感、思い込みなど、片づけの障害となる心理的要因に寄り添い、無理なく続けられる仕組みづくりを提案しています。
2012年からこの分野を学び、2023年にアメリカの専門団体「Institute for Challenging Disorganization®」にて日本人初のCPO-CDを取得。
「片づけの負担を減らし、自分らしい人生を楽しめる人を増やしたい」との思いで活動中。